日本人が知らない!海外デジタルマーケティング最前線 (前編)
テクノロジーの進化によって、国境を超えたマーケティングはますます容易になっている。特に2020年東京オリンピックを控え、日本マーケットには世界から注目が集まり、これを機に、海外市場への進出を本格的に検討する企業、海外顧客との接点を持ちたいと考える企業も増加している。
しかし、何から始めたらよいのかわからない、思うように進まない、ともやもやした思いを抱えている企業も多いのではないだろうか。そのような企業担当者のために、11月14日御茶ノ水にて「日本人が知らない!海外デジタルマーケティング最前線」と題したセミナーが開かれた。
主催は、ロンドンと東京に拠点をおくコンテンツマーケティング会社TAMLOとオランダに本社を置き、モバイルネットワークを利用したマーケティングをグローバルに展開するCM.comJapan株式会社。CM.comの本社よりゲストスピーカーを招き、今、海外デジタルマーケティングでは何が起きているのか、実例紹介を交えながら熱いトークが繰り広げられた。
フランス人が日本に来て感じた、機会損失
まずはCM.comのゼネラルマネージャーHodny Benazzi(ホドニー・ベナッジ)氏から「日本企業がグローバルに目を向けるべき理由」が話された。Hodny氏はパリ出身。日頃から趣味のゴルフにミズノ製品を利用したり、奥様も資生堂の化粧品を愛用したりと、日本製品に愛着があり、今回の来日も楽しみにしていたいう。
ところが、築地の寿司屋を予約しようとしたところ、ウェブサイトは全て日本語だった上、英語で問い合わせをしたら日本語で定型文が返信されたのみで、諦めるしかなかった。
もし、この寿司屋が英語でコミュニケーションができるモバイルツールを整えていたら、このような顧客損失をすることがないのに、と早速日本で感じたマーケティングの穴を話してくれた。
また日本でLINEがメッセージングアプリとして主に使われているが、欧米人はだれもLINEを利用しておらず、コミュニケーション手段にとまどう。そのような経験を日本ですると、とても疎外感を感じるという。
一方で、パリにも多くの中国人観光客が訪れているが「WeChat」というアプリを利用して会話ができる他、メトロのモバイル案内にも中国版があり、ストライキの情報などをリアルタイムで確認できる。日本ではホテルのエアコンも日本語のみで温度調整にも困難を感じたという。
日本企業が世界に目を向けるべき理由
そのような体験をした上でHodny氏は日本企業が世界に目を向けるべき理由を3点あげた。
・モバイルビジネスはグローバルであり国境がない
・日本には多くの海外顧客がおり、様々な手段を用いて繋がり、会話する必要がある
・日本には、楽天、ユニクロ、トヨタ、日産、任天堂、ソニー、キャノン、パナソニック、資生堂、無印良品、アシックス、ヤマハ、ニコン、MIZUNOなど、多くの素晴らしいグローバル企業がある
20年間にわたりモバイルを中心にビジネスをしてきたHodny氏には、すでに日本の大企業からモバイルを利用したグローバル展開の相談が持ちかけられている。
現在、<マーティング(市場調査)/セールス(販売)/サービス(アフターケア)>のどの段階においても、<TV /店頭→ウェブサイト→モバイル>、とツールが変化してきている。
そして、モバイルツールにおいては「カンバセーションコマース(会話型コミュニケーション)」が重要だが、この点で日本は「モッタイナイ」遅れを取っているようだ。
中国企業はいち早く世界に展開
当然だが、海外に目を向ければマーケットの大きさは全く異なる。
中国ではいち早く、海外に向けたサービスが作られている。例えばJolly Chicという通販サイトは中東に向けたサービスの展開を開始し、マッチングアプリTantanはインド版を展開している。
また、メッセージングアプリとともに進化を遂げてきたオンライン決済においても、グローバル対応が進んでいる。モバイルユーザーは広告などに関してセンシティブなところがあるので注意は必要だが、外国人顧客との会話型コミュニケーションが増えれば、もっと多くのビジネスチャンスが生まれるだろう、と締めくくられた。
海外でのモバイルマーケティング事例
それでは、海外では実際にどのようなモバイルを利用した会話型コミュニケーションが活用されているのだろうか。CM.com社の中藤丹菜氏より、モバイルを用いたマーケティング事例が紹介された。
CM.comではLINEやWhatsApp、そしてSMSを他のSNSと比較して、よりパーソナルなコミュニケーションツールとして位置付け、マーケティングに活用している。例えば世界中に1000店舗以上を展開するフランスのEtam(イータム)という女性服メーカーは、SMSを利用して、誕生日クーポンやセール情報を配信し、オンラインでのセールスを増やしている。
さらにオフラインマーケティングにもSMSを利用し、来店促進にも活用している。日本でもおなじみの「Pringles(プリングルス)」ではWhatsAppを利用したキャンペーンが行われた。PringlesのWhatsAppアカウントにプリングルスを2本買ったというレシートを送付すると旅行券が当たるというプロモーションだ。
同様にWhatsAppを利用したキャンペーンはマクドナルドでも行われた。このように、同じモバイルを利用したマーケティングでも、国が違えば、言語のみならず、使用するツール、ヒットするキャンペーンも異なる。 後半では、実際にロンドンで「酒」のプロモーションを行った事例を元に、TAMLOの石野雄一 氏より、「英語のコンテンツマーケティングとローカライゼーション」について話がされた。