中国インバウンド接客を高め、越境ECへ

大塚 孝二

2018年1月から6月までの訪日外国人数は過去最高の前年同期比15.6%増の1589万8900人と発表された。上半期として初めて、1500万人を越えた。
これは、格安航空会社の便数増加などの影響もあり、今後も、引き続きインバウンド客数は伸びると思われる。
1月から6月の国・地域別の訪日外国人数をみると、中国が前年比23.6%増の405万6400人トップである。続いて韓国の401万6400人、3位は台湾の250万5800人となっている。
中国はEC市場でも成長率、市場規模、EC化率においても世界最大を誇り、中国だけで世界全体の4割のEC市場を占有し、中国はまさに世界をリードする存在である。 今回は、この中国のインバウンド需要と越境ECの関係、さらに中国人向けインバウンド対策などについて見ていこう。

中国人は訪日をきっかけに越境ECで買い物をする

中国人は訪日をきっかけに越境ECで買い物をする訪日がきっかけで越境ECを利用した購買金額表(上)と中国における越境ECでの人気商品(下)

観光庁がまとめた「平成30年版観光白書」によると、中国など5つの地域を対象に、訪日がきっかけで、越境ECを利用して再度商品を購入した金額は、推計だが7800億円としている。
そして、中国は、この5つの地域・国別(中国、台湾、韓国、香港、アメリカ)ではトップの購入額である。中国人は6,300億円のうち、55%にあたる3,500億円も訪日をきっかけとして、帰国後、越境ECで商品を購入しているのである。
中国人はインバウンドをきっかけに越境ECを利用する傾向が高いことが示されている。
購入した商品ジャンルをみると、トップは化粧品の48.5%、次に食品の41.6%、3位は医薬品、35.5%である。

中国において越境ECを利用する理由は?

中国において越境ECを利用する理由は?中国における越境ECを利用する理由

中国をはじめアジア各国の地域では、ジャパン・クオリティへの信頼を強く持っている。日本のものづくりへのこだわり、品質の高さに価値を見出している。
越境ECで購入した理由を見てもトップは「中国内では店頭で販売されていない製品だから」(44.4%)、2位は「日本に旅行をしたときに購入して気に入った製品だから」(40.4%)となっており、そのメード・イン・ジャパン需要の大きさがわかる。
ベビー用品のおむつの販売などは、中国への越境EC購入額が約2.6倍にも拡大している。国内メーカーは国内の人口減少で消費縮小が予想される中、越境ECで新たな需要を堀り起こしを加速させている。

7月から中国、日用品関税引き下げ

また、2018年7月1日から、中国の家電製品、衣類、日用品などの輸入関税が引き下げられた。中国は2015年から輸入品の関税を段階的に引き下げている。
具体的にはアパレル・靴・帽子等の平均関税率を現在の15.9%から7.1%へ引き下げ。
冷蔵庫・洗濯機などの家電製品を現在の20.5%から8.0%へ引き下げ。
スキンケア・化粧品・医薬ヘルスケア品の一部を現在の8.4%から2.9%と約半減され、特にインバウンドで需要の多いスキンケア・化粧品の関税の下げ幅が目立つ内容だ。
今後はますます、越境ECを利用して買い物をする中国人が増えることが予想される。

7月23日、アリババとJR九州が提携、中国から九州へ100万人送客めざす

月23日のニュースでは、中国のアリババグループと、JR九州が提携されたことが公表された。
これは、中国から九州へアリババの旅行サイト「Fliggy」を通じ、九州の観光地を紹介し、2023年までに九州に100万人の送客するといもの。その経済効果1500億円以上と試算される。
そして、アリババグループは九州全土でスマホ決済の「アリペイ」を普及させるのが狙いのようだ。 アリババの送客力はすごく、アリババを通じキャンペーンを行ったフィンランドでは、今、中国人で溢れかえっている。
中国は1億3000万人という、世界最大の観光客を世界各地に送り出している。日本への観光客はそのうちの6%程度である。この数字を見ても勝算はかなり高いと言えるだろう。


中国人の観光接客のポイント3つ

中国人は家族、親族を大切にし、対外的にメンツや意地を重要視する傾向が強い。数年前、「爆買い」などというショッピングで、訪日観光では身内や親族、知人に大量のお土産を買ってプレゼントしていたのも記憶に新しい。
中国の「爆買い」は越境ECへ変わり”もの”より”こと”に変わりつつあるが、以前として、化粧品関連の商品などのお土産物は売れ続けている。
ここでは、中国人に対してインバウンド対策、接客のポイント3つについて見ていこう。

(1)中国人には手厚い接客が求められる

中国人はメンツが重んじるので、”特別なおもてなし”をすることが重要だ。 訪日する大勢の中国人団体客には、まず、笑顔で”ファイン グゥアリン”(いらっしゃいませ。)の言葉かけから始めよう。
「ありがとうございます」は”シエシエ ニン”、「またのお越しをお待ちしております。」は”フアンイン ザイツー グアンリン”である。通常の挨拶は中国語で行い歓迎の意を表すのが基本だ。
そして、重要な接客は親切、丁寧に対応する。日本人の場合、買い物中に店員から話しかけられるのを嫌う傾向があるが、中国人にはどんどん、見ている商品に対して説明するようにする。丁寧に接客しないとクレームが発生することにもなる。
「この商品にはどのような効果があるのか?」、「使い方はどうするのか」、中国人に対しては日本人以上に手厚く対応する、「お・も・て・な・し」が、中国人インバウンド接客の最強ツールである。

(2)歓迎POPや店内案内、商品カタログなどを中国語を用意する

店舗入り口には歓迎の気持ちを中国語で書いたPOPやスマホ決済、銀聯カード決済ができる、無料WiFi利用できるなど表示すれば、中国人集客の大きなメリットになるだろう。
また、中国人が購入する化粧品や食品、医薬品などについては効能や成分など中国語カタログがあると、店員が中国語で説明ができない場合など役立つだろう。

(3)中国で利用されるスマホ決済を導入する

中国人の買い物や各種料金の支払いは、今や、スマホ決済ができてあたり前の時代である。中国人に日本人と同じように現金での支払いを要求すると、困惑するだろう。
中国で利用されているスマホ決済は「Alipay(支付宝、アリペイ)」「WeChat Pay(微信支付、ウィーチャットペイ)」が二大勢力である。 2016年の統計では、アリペイ55%、WeChatペイ37%となっているが、2017年後半あたりから、アリペイを主要な決済手段にする人が増えているようだ。
日本を訪問する中国人が増えているために、中国人がよく訪れるデパートや店舗では、アリペイとウィーチャットペイが利用可能であることを目にすることが多くなった。
東武百貨店、池袋本店では、「支付宝(アリペイ)」と「微信支付(ウィーチャットペイ)」を4月下旬に、一部テナントを除く全館で導入した。
中国ではアリペイとウィーチャットペイのQRコード決済が支払いの手段の主流になっているため、機会損失にならないよう、中国人集客にはこのインフラを整える必要があるだろう。

まとめ

日本のインバウンド市場は急成長してる。それにリンクするように越境ECも拡大している。
2017年の訪日外国人数は2869万人(前年比19.3%増)で、2011年の622万人と比較しても 4.6倍の増加、観光消費額も4兆4161億円、2011年の5.4倍である。
このインバウンド市場で大きな存在感を示しているのが、中国である。2017年の訪日中国人数は735万人(前年比15.4%増)で全体の25.6%、観光消費額も大きく、1兆6946億円(前年比19.3%増)で全体の38.4%を占有してる。
訪日する中国人は、中国観光客総数1億3000万人の6%に満たないことを考えると、その、ポテンシャルは高く、今後この比率はますます、高まると言えるだろう。


著者

大塚 孝二 (Koji Ootsuka)

株式会社デジタルスタジオ営業部でLive Commerceブログ、国内マーケティング業務を推進しています。これまでの略歴は武蔵野美術大学 基礎デザイン学科卒業後、ミュージアムグラフィック業務を25年にわたり従事。 ミュージアムグラフィックとは、博物館、科学館などのサインや情報パネル、ポスター、パンフレット、カタログ、ITコンテンツなどミュージアムに関するデザインを言います。 その後、時代の流れとともにIT、WEBスキルの必要性を感じ、主としてとして前職の経験を活かし、デザインユーザービリティを追及したWEBデザイン啓蒙を中心に活動しています。 現在は日本電子専門学校デザイン講師などの仕事の傍ら、デジタルスタジオにて国内マーケティングやLive Commerce Blogにおいて越境EC周辺の情報発信を行っています。

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