EC業界News1週間まとめ〜ヤフー ショッピング取扱高前年比31%増/好奇心をビジネスに 前澤友作のZOZO魂

石郷“145”マナブ

こんにちは。編集長の石郷です。
今週、読まれたのはこちらです。

■【速報】ヤフー決算発表 今後の見通しは?
https://ecnomikata.com/ecnews/18738/
■【速報】前澤社長「新ZOZOSUIT」を発表 3年目で売上2,000億円
https://ecnomikata.com/ecnews/18741/
■Amazonが「FBA梱包準備サービス」を発表。
https://ecnomikata.com/ecnews/18684/
■『らくらくメルカリ便』発送が、ついにセブンイレブンでも可能に
https://ecnomikata.com/ecnews/18700/

ヤフーとスタートトゥデイの決算の共通点はデータの活用にあり

ヤフーとスタートトゥデイの決算の共通点はデータの活用にあり

 振り返ると、ヤフーとスタートトゥデイの決算かなと思います。
共通して感じたのは、集客力での強みをデータに活用して新たなビジネスチャンスを模索しているという点でしょうか。

 まずヤフーの決算を見てみることにしましょう。
 最初はヤフー全体の話から。2017年度の通期決算のハイライトとしては売上収益が8971億円、営業利益が1858億円となっていて、売上収益に関しては21期連続の増収を実現しました。売上の収益の構成を見てみると、以前にもましてコマース事業の存在感を増しています。確かにメディア事業も2.6%増となっていますがコマース事業は前年度比で6.3%増となっています。

 ここにはアスクルグループも含まれているので、それを除くとその前年度比は8.5%となっています。ヤフーは出店料などを無料にしていますが、その分ショッピングの広告売上収益で取り返すという戦略で推し進めていて、この仕組みが奏功していることが伺えます。

 かつ、彼らがECに注力していることは販売促進の点から見てもわかることで、560億円を投下した中で、ショッピングに約40%、オークションに約20%、投下しています。ポイント還元などをロイヤルカスタマーの育成につなげており、結果的に積極的な投資は既存顧客の満足度を高めていて、それは次のコマース事業の内容を見ればより一層わかると思います。

Yahoo!ショッピングを支える会員 未来はYahoo!ウォレットの動向に注目

 それではコマース事業に目を向けてみましょう。ショッピングの事業取扱高は6276億円、前年比31%増となっており好調です。この背景には「Yahoo!プレミアム会員」のID数が前年度末比1.6倍となっているのに加え、プレミアム会員の取扱高比率が72%を占めていることが挙げられます。つまり、Yahoo!ショッピング内でプレミアム会員に対しての施策が奏功している中で、そこにYahoo!プレミアム会員が増加したことでそれに拍車がかかった、と言えます。

 特に、プレミアム会員施策にSoftBank会員を取り込んでいることが大きく、SoftBankのスマホを持つ人に全方位でアピールしていて、さらに伸びる気配があります。さらに、SoftBank会員がまだ十分に、Yahoo!ショッピングを活用しきれていないことも鑑みれば伸び代はあると言えるでしょう。

 そこである一定のプレミアム会員の情報が集まってくれば、自ずとYahoo!Japanを持つメディアとしての強みを発揮して、購入データ以外にも興味関心や生活スタイルなどを一つのIDで管理することができるようになります。すると、購買の可能性はさらに広がってくるでしょう。

 しかも、コマース事業の中には決済事業も含まれていることが僕個人としては、とても気になっていて、おそらくですが、モバイル決済を強化してくることになると思います。決算資料にもありましたが「Yahoo!ウォレット」の存在です。

 以前、僕はLINEの経済圏が広がりそうだという話をこの「1週間まとめ」で話した際に、これからの注目すべきは「電子マネー」であると言いましたし、ここが伸びると言いました。Yahooもきっとそうだと思います。おそらく「Yahoo!ウォレット」を活用して、手軽にオンラインオフライン問わずどこでも、当たり前に決済を促すことになるでしょう。

 つまり、決済の利便性の向上はYahoo!ショッピング自体の利用機会を増やします。その親和性の高さは、コマース事業の中にこの決済を入れていることからも分かります。この辺の結びつきを強めてショッピングの付加価値を高める施策を、きっとあの人、小澤隆生さんは仕掛けてくるような気が僕はしています。

ZOZOSUITの採寸問題解決は人の価値を高めファッションに風穴をあける

ZOZOSUITの採寸問題解決は人の価値を高めファッションに風穴をあける

 さて、続いて、スタートトゥデイの決算の話題です。
 商品取扱高は2,705億円(前年同期比27.6%増)で、営業利益は326億円(同24.3%増)となっており、商品取扱高、営業利益ともに、期初計画を達成していて、内訳に関して見てもZOZOTOWN 事業は、商品取扱高は2,629億円(前年比28.3%増)と比較的順調に推移しています。

 こちらは何と言っても、中期経営計画も発表し、大幅な成長を宣言しました。その核となる要素として、「ZOZOSUIT」が挙げられるわけです。僕も前澤さんが何を語るのかが気になり、この発表の場に向かったわけですが、その前澤さんはというと、センサーが内蔵された旧ZOZOSUITは潔く諦め、新しいZOZOSUITを着用して、決算発表の場にいました。ZOZOSUITならびに PBの「ZOZO」にかける意気込みを感じた次第です。

 デザインでは諦めましたが、彼はそれを持ってやりたい事を貫いたと言えるでしょう。ZOZOSUITは身体中にマーカーと呼ばれる水玉模様があります。これをスマホで読み取らせることで、その人のフォルムをデータとして認識し、ZOZOのサーバーに蓄積されて、ここでその人のサイズにピタリと合ったPBの『ZOZO』を提供すると言います。

 僕が心惹かれたのは、単純にサイズを合わせると言う部分だけにこだわっているわけではないこと。例えば、少しお腹が出ている人は、このくらいのサイズのものを好む傾向が購買データなどから割り出せます。データが集まれば集まる程に、ZOZO側がリアルな体のフォルムがわかっているからこそ、そのフォルムの人が自ら一番カッコいいと思えるファッションのデザインも ZOZOが把握できるようになってくる。

誰でもカッコ良く着れるファッションがある 夢を与えるZOZOの展望

 すごく前澤さんの言葉が印象的で、「サイズの問題を世界レベルで解消し、カッコ良く着こなすことができれば、ファッションに革命を起こすことができる」と言うこと。誰しもがその人にあった洋服があるわけで、それを着こなすことでカッコ良くなれるはずだと仮定し、カッコ良くなれると夢を抱けば、必ずやファッションに魅力を感じ、購入機会も増えると言うのだから、なんとポジティブな発想で未来を作り出す人だと思いました。

 しかも夢物語ではありません。しっかり、かつてのZOZOSUITにおいてすでに検証をしていて、それは配布した人のうち、使ってくれた人の割合が60%で、そのうち50%の人がPB商品を2.5点購入することが分かっています。スタートトゥデイでは、新たなスーツを600万枚〜1000万枚配布する計画で、それをこの検証に当てはめると、これまでなかった売り上げが同社にもたらされることになる。

 誰もやったことのないことをやるから、その指標は人の心をどれだけ動かせるか、と言うことになる。だから、彼はそのロマンを語るのだ。この新しいZOZOSUITに対してカッコ悪いとか言う人がいましたが、大事なのはその先の未知なる服に出会ってカッコいいと思える自分に巡り合えることに、この取り組みの意味がある。勿論、それはあらゆるアパレルで実現すると言います。例えば、今はTシャツなどですが、今後はスーツなどもその考え方で作成していくと言います。

 これって凄い事だなと思いました。今までは人が服に合わせていた。けれど、このZOZOSUITによって、服が人に合わせる時代になるかもしれない。それは確かに革命だ。
その大いなるスタートトゥデイ前澤友作という男の挑戦を僕は応援したいと思う。

 今日はこの辺で。
笑顔あふれる1週間でありますように、と言いつつ、GWですね。
よく休み、よく働き、最善尽くせる一週間でありますように。

ではまた来週、お会いしましょう。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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