キーワード「ニューリテール戦略」アリババ主催Japan MD center annual conference開催

亀井 達樹

世界最大規模のECモール、Tmallをかかえるアリババグループ。2018年3月末までの第4四半期決算では、昨年比61%増益の619億元を売り上げている。同社のグループ企業であるアリババ株式会社がJapan MD center annual conferenceを主催した。そのカンファレンスに参加したので、今回はその模様を紹介する。

アリババグループの発展

アリババグループの発展アリババ株式会社 代表取締役社長CEO 香山 誠氏


アリババ株式会社が、2016年5月に設立した日本ブランドの中国越境EC進出・販売支援サービス「Japan MD center」。同サービスがスタートしてから今年で2年となり、その歩みと今後の展望について、アリババ株式会社代表取締役社長CEO 香山誠氏より説明があった。

同社は2015年に日本商品のTmallでの販売を開始し、2016年にはJapan MD centerのサービスをスタートし、売り上げも順調にのびていった。

結果、シングルデー(独身の日)では2016年・2017年ともに売り上げ合計金額の一位は日本商品が獲得した。
詳しい独身の日に関する内容は以下の記事で紹介しているので省く。
https://ecnomikata.com/ecnews/16575/


第3回の目標とは?

そして、第3回目となる今回は、更なる販売チャンネルの拡大を目標とするとした。

同会では、香山氏から2017年から新たに提唱している小売にデータテクノロジーを組み合わせた「ニューリテール戦略」に関しての紹介があった。そして、そのビックデータから得られる消費者の需要を分析し、顧客企業と消費者の効率的なタッチポイントを創出するとした。

オープニングが終わり、次に登場したのがアリババグループCEO ダニエル・チャン氏だ。同氏は詳しいアリババグループの取り組みについて発表した。

アリババグループは世界最大のEC市場として、成長し2017年度の売り上げ金額は7,680億ドルだった。
さらに驚くべきことに2017年度における日本商品の売り上げは前年度122%の増であると発表された。日本文化が中国文化が似ているために日本商品はよく売れるそうである。

月間アクティブユーザーのうち、モバイルから購入した人は6億1700万人で全体の86%を占めるとし、中国でモバイルが浸透していることもうかがえた。そして、中国に限らずグローバルな展開を視野に入れ、東南アジア最大の市場LAZADAへの出店にも力を入れているとのことだ。

ダニエル氏もまた「ニューリテール戦略」に関して提言した。その内容は「オンラインとオフラインを融合しアリババグループが保有するデータやテクノロジーを活用することで在庫管理や物流、販売形態、ユーザーの消費体験を再構築するもの」というものだ。

その後、出店企業の取り組み事例紹介として、サントリーホールディングス株式会社、株式会社アシックス、株式会社ストライプインターナショナル、コーセー株式会社が登壇した。


2人に共通して現れた「ニューリテール戦略」

2人に共通して現れた「ニューリテール戦略」アリババグループ CEO ダニエル・チャン(張勇)氏


オンラインとオフラインの融合であるニューリテール戦略。今後についてどのような戦略を考えているのだろうか。

例としてはダニエル氏の発言の中にあったTmall Globalのオフラインストアに関する話だ。同ストアは2018年4月20日に展開した。ストアには、Tmall Global上で販売されている海外商品が展示してあり、ユーザーは店舗で実際に商品を体験することができるのだ。気にいった商品があった場合は商品ごとに設定されたQRコードを読み取ることでその商品を購入可能。商品は保税倉庫から自宅まで直接配送される。ユーザーは商品を実際に体験できるとともに、普段のweb上同様簡単に購入することができ、企業は認知拡大につなげることができるのだ。

もう一つの例として、リアルマーケットでのデータ活用があげられた。中国では街に根差した雑貨屋が全部で600万店舗あると言われている。それに対して、LSTという施策を行っている。LSTとは、それらの店舗をデジタル化するものだという。実際に100万店舗ほどで実施されており、モバイルアプリでの商品の発注から商品の分析までを可能としている。

先ほど紹介した例はどちらもオンラインとオフラインがうまく絡み合っている。

改めて、ダニエル氏の発言にあった「ユーザーの消費体験を再構築」という言葉に対する本気度を感じた。

変化するEC

モバイルの発展とともに、情報はいつでも手に入るものとなった。利便性が増す一方で、情報が氾濫し、自分にとって必要な情報の取捨選択が必要である。

ネットショップにおいても同様の事態がおきているのではないだろうか。興味のあるジャンルを調べれば関連した商品が山ほど現れ、どの商品が本当に自分にあっているか判断ができなくなってしまうという経験は多くの消費者が経験しているだろう。そこで重要となってくるのがTmall Globalのような「ニューリテール戦略」ではないだろうか。

オンライン上での手軽さとオフライン上での実体験を組み合わせた現代の流れに合わせた消費の方法であるように感じた。

日本においても、近年この動きは強まっているように感じる。最近では、3メガバンクがスマホ決済におけるQRコードの規格を統一したことや、ECショップのポップアップショップが増えていることなどが挙げられる。

2020年のオリンピックに向け、インバウンド消費を増やそうという国をあげての動きもある。ここに便乗し、自社商品のファンを作ることで、その後の商品購入にもつなげていくことができるのではないだろうか。

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記者プロフィール

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メディア編集部 マーケチーム
趣味はサブカルとスポーツ。
冬になると毎週雪山に出没します。
将来の夢はバイクで日本一周すること、ヘリスキーをすることです。

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