コロナ禍で狙われるEC クレジットカード不正のターゲットが旅行関連からECへ移行の動きも[アクル調査]

ECのミカタ編集部

株式会社アクル(本社:東京都港区、代表取締役社長:近藤 修)は、オンラインでのクレジットカード不正利用対策の各種ソリューションを展開している。同社サービスの各種統計から、クレジットカードを主とするオンライン決済・キャッシュレス決済におけるセキュリティソリューションに対するニーズの拡大の実態と、不正な決済取引に対し新型コロナウイルスの感染拡大が与えた影響について、分析と考察を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

EC業界におけるセキュリティ対策ニーズの高まり

EC業界におけるセキュリティ対策ニーズの高まり

◆オンライン決済におけるクレジットカード不正利用被害金額推移

経済産業省は、2020年に向け、国際水準のクレジットカード取引のセキュリティ環境の実現を目標に掲げ、クレジットカード取引に関わる幅広い事業者及び行政が参画した「クレジット取引セキュリティ対策協議会」を2015 年 3 月に設立し、毎年ごとに実行計画を策定し取り組みを推進してきた。

しかし、電子商取引の拡大、キャッシュレス決済の推進などの情勢を背景に、クレジットカード取引における不正利用、およびその被害は拡大傾向にある。中でも、オンライン決済におけるクレジットカード不正利用の被害は2012年以降、継続的に増加傾向だ。

日本クレジット協会の発表によると、2019年被害金額を示す番号盗用、およびその他の被害による金額は約256億円にのぼる。2020年も同様に高い水準のまま推移しており、被害金額は第1、第2四半期ともに50億円前後の被害金額となっている。

出典:日本クレジット協会
*海外発行カードによる被害は含まれない

◆同社への不正対策サービス各種に対する相談件数の推移

同社ではECサイト運営事業者向けに、クレジットカード決済における不正対策ソリューションを提供している。同社の提携先パートナー企業数が増加したことも要因の一つではあるものの、ECサイトを運営する事業者からの相談案件が増加傾向であることから、年々、ECにおけるセキュリティ対策(チャージバック)に課題を抱えるケースが増加傾向にあると言えるとしている。

2020年の第3四半期における問い合わせ件数は、昨年同時期と比較し、355%となった。この推移から、クレジットカード不正利用対策を検討するEC事業者が増加していることがわかる。

◆同社サービスによるECサイト取引チェック件数の推移

同社は、EC事業者を対象にクレジットカード決済における不正対策ソリューションASUKAを提供している。このASUKAが導入されているECサイトにおける、取引のスクリーニング処理件数を集計した。それによると、2020年の4月以降、当社サービスを利用するECサイト数が増加し、スクリーニングされた決済取引件数が急激に増加している。

2019年9月と、翌年同時期にあたる2020年9月とを比較すると、昨年同時期対比で500%を超える件数の決済取引が当社システムによるスクリーニング処理が実施されている。カード決済におけるセキュリティツール利用のニーズが増加傾向にあること、その背景として、2020年を迎えてから、クレジットカード不正利用対策ツールの利用サイト数の増加スピードも加速していることが見てとれる。

商材・傾向の分析

商材・傾向の分析

◆同社への不正対策に関する相談件数・商材分布

前段の同社への不正対策ソリューション問い合わせ案件をさらに詳細分析している。同社に対してカード不正対策の相談を行った事業者の業種、加えて、ECサイト運営の場合は取り扱い商材を調査しカテゴリ分けを行った。

特に目立つのは、ファッション・コスメを取り扱うEC運営事業者からの問い合わせ件数の増加だ。2020年の第3四半期には件数が大きく増加していることがわかる。

◆同社の不正対策サービスASUKA利用ECサイト数の推移

同社で提供するカード不正対策ソリューションのうち、不正を低減するASUKAを利用するECサイトの業種ごとの比率調査を実施している。大きく、物販(一般商材とファッション・コスメに分別)、旅行商材、その他(WEBサービスや無形商材、CtoCプラットフォームなど)のカテゴリに分類。ECサイト数の累計を四半期ごとに集計した数値を出している。

それによれば、2019年第3四半期におけるファッション・コスメ取扱のECサイト数を1とした場合の比較で、翌年同時期にあたる2020年第3四半期のECサイト数は1000%以上の増加が見られた。2020年に入り、ファッションやコスメといった物販ECサイトでのASUKA利用が増加し、一方の旅行商材取り扱いのサイト数の増加は、他の業種と比べて横這いであることがわかった。

また、月次の推移より、ECサイト運営各社が同社サービスを導入したタイミングと、新型コロナウイルスに関連する各種ニュースを時系列で比較している。その結果、新型コロナウイルスの存在が広く認知されたクルーズ船内での新型ウイルスの感染拡大は大きなニュースとなった頃から、海外渡航のキャンセル増加が相次ぎ、日本へのインバウンド観光客数も大幅に減少している。

こうした背景の中で同社ASUKAは、従前より旅行商材を取り扱うECサイト向けをメインとして提供をしてきたものの、ファッション・アパレルを取り扱うEC事業者からの相談件数も増加し、利用開始される件数の増加も顕著だった。

新型コロナウイルスの拡大により、これまで旅行商材をターゲットに不正購入を繰り返していた犯罪集団のターゲットが、ファッションやコスメの領域にシフトした可能性が伺える内容となっている。

クレジットカード不正利用 被害の遷移にかかる考察

これらの調査より、事実として以下3点が挙げられるとしている。

[1]
クレジットカード不正対策ツールを導入するECサイトが増加傾向にある

[2]
中でも、複数あるECのカテゴリのうち、2020年4月以降、ファッション・アパレル商材を扱うECサイトの不正対策ツール導入の増加が顕著

[3]
同社への問合せ件数の増加から、EC業界におけるセキュリティサービスへの関心の高まり

また、これらの事実関係の背景として、新型コロナウイルスの拡大が社会に与えた影響として以下が推察されるとしている。

[1]
新型コロナウイルスの拡大を受け経済的不安が蔓延したことによる軽犯罪の増加

[2]
クレジットカード不正利用を通じ旅行商材の転売により利益を得ていた犯罪者が、転売機会の減少を受け、ファッション・コスメを扱うECサイトへとターゲットを変遷させた

新型コロナウイルスの影響により勤務形態、業務時間の現象や、収入の現象などにより、闇バイトと称して犯罪に加担してしまうケースが増加した可能性が考えられそうだ。なお、オンラインにおけるクレジットカード不正利用被害では、被害を受けた事業者による被害届が受理されないという相談も受けることがあるという。そのため、関係省庁の公表する認知件数・検挙件数には反映してこない可能性がある。

2020年に公表された経済産業省のガイドラインにおいて、宿泊施設が高リスク商材認定されるなど、被害が目立つ領域だった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により訪日観光客の大幅な減少と同時に、旅行商材の転売機会も減少したとしている。同社では、こうした背景を受けて、犯罪者のターゲット商材として、転売機会が残っているファッション・コスメを取扱うECサイトに変遷したと推察している。

2020年の新型コロナウイルスの拡大前から、クレジットカードの不正利用の増加傾向は認められており、2015年から、経済産業省では2020年に向けてクレジット取引における国際水準のセキュリティ環境の整備を目指し、対策の強化に向けた具体的な取組を議論し策定してきた。

しかし、冒頭の被害金額の推移の通り、対面決済における不正利用被害はICチップの普及により減少傾向にあるものの、非対面決済(オンライン)の領域では不正や被害が増加していた。

コロナ禍では新たな生活様式・働き方などが試行錯誤される中、キャッシュレスの推進や、非対面オンラインサービスの普及がこれまで以上に加速することが想定される。同時に、こうした新領域におけるセキュリティ対策の意識やリテラシーの向上が求められると言えそうだ。

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