【UPS調査】日本とアジアの貿易額は2030年に1.7兆ドルへ拡大、しかし課題も

ECのミカタ編集部

UPS(NYSE: UPS、以下「UPS」)は、アジア域内の貿易動向をまとめた最新のレポート「Clearing the Runway for Intra-Asia Trade」(アジア域内貿易のための滑走路)を公開した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

成長機会の最大化のために必要なものとは?

UPSによる最新のアジア域内の貿易動向をまとめたレポート「Clearing the Runway for Intra-Asia Trade」(アジア域内貿易のための滑走路)によると、日本とアジアの主要な11か国・地域(日本とあわせて「Asia-12」)との貿易額は、2020年の0.7兆ドルから10年後の2030年には2倍以上の1.7兆ドルに拡大する可能性があるという。

この伸び率(143%増)は、Asia-12の平均(111%増)を上回るものだ。加えてこのレポートは、特に4つの主要な製品セグメントの貿易の成長要因、潜在的な阻害要因、2030年の機会を最大化するためのマルチステークホルダーによる取り組みの必要性を明らかにした。

日本企業のデジタル対応は重要な課題

アジアの市場は、世界的視野から見ても新しい消費者需要の発信地となっており、Asia-12市場間の貿易は現在、世界貿易の88%を占めている。アジア最大の貿易国の一つである日本は、今後の10年においてもアジア域内貿易に不可欠な存在だ。さらにRCEP(地域的な包括的経済連携)、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的協定)への日本の参加により、アジア域内でさらなる連携が進むことが想定されるとしている。

日本とアジア各国との貿易は、小売、産業機械・自動車(IM&A)、ハイテク、ヘルスケアの4つの産業セグメントが中心となっており、71%を占めている。このうち32%を占めるIM&Aと24%を占めるハイテク産業は、アジア全域でデジタル化が進んでいることから、今後も成長が期待できる分野だ。たとえば韓国とは製造業・電子産業での相互投資を行っている点で、堅実な成長が見込まれると分析。

革新的なサプライチェーンと高品質なインフラへの投資拡大が、長期的な成長の上では重要な要素となる。日本がレジリエントなサプライチェーンを構築するためにアジア企業間のデータ共有の促進を計画していることもあり、デジタル対応インフラの導入は、企業にとって次の10年に向けての重要な課題となるだろうとしている。

日本の貿易成長を阻害する3つの障壁

日本の貿易成長を阻害する3つの障壁

一方で、調査対象となった企業においては、「関税・その他の懲罰的措置」「統一された規格がない」「物流業界における労働力・技能不足」が日本の貿易成長を阻害する上位3つの障壁として挙げられている。

これらの地域貿易の阻害要因を軽減し、域内貿易を拡大するには、マルチステークホルダーによる取り組みが必要だとしている。これには、官民投資によるレジリエントなサプライチェーンの構築、製品規格の統一に向けた協力、関税の撤廃と中小企業・小規模事業者の競争力強化に向けた包括的地域貿易協定の交渉などが含まれる。

日本は、重要な位置にあり続けるだろう

UPSジャパン代表取締役社長の西原哲夫氏は次のように述べている。

「日本は、最終製品のみならず部品や素材の生産国、輸出国としても、消費国、輸入国としても重要な位置にあり続けることでしょう。UPSは116年におよぶ国際貿易の経験をもって、グローバル企業の、そして国内企業のサプライチェーンの確立と、ビジネスの拡大を物流の面から支えていきます。本調査で得られた知見を活用し、お客様がアジアでの成長目標を達成するための戦略立案と実行を、我々UPSが支援できることを大変嬉しく思います」

日本が長くかつ徹底したデフレ政策によって、いわゆる「失われた20年(30年)」のもとにある時期に、先進各国の中央銀行は、マネーサプライを拡大するなど、金融緩和政策を推し進め、現在はそれによるインフレ抑制のために、金融引き締めに転じている。日本は、第二次安倍政権の成立後、かなり遅れて日銀による大規模金融緩和政策に転じ、ようやくその「失われた20年(30年)」から脱しつつあるように見える。

日本と先進各国におけるマネーサプライの需給ギャップなどから円安傾向にあり(インバウンド需要の面では当然プラスにもなり得る)、またロシアによるウクライナ侵攻で燃料や原材料価格が高騰するなど、日本経済のさらなる成長の前には、必ずしも明るい要素だけではない。

しかし、今回の同社の調査では、力強いアジア経済圏の成長の中で、日本が重要な位置にありつづけることがデータの上からも示された。一方で、「関税・その他の懲罰的措置」「統一された規格がない」「物流業界における労働力・技能不足」といった点が日本の貿易成長を阻害する障壁として挙げられた。

またデジタル対応も課題として述べられており、とかく「EC発展途上国」と言われてきた日本の事業者におけるEC化をはじめとしたさらなるデジタル化も2030年に向けた世界の成長機会を捉えるためには、引き続き重要な要素となりそうだ。


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