「2024年問題」「送料無料表示問題」「ステマ禁止」…EC事業者が今後注視すべきこと

奥山晶子

2023年には消費者法の改正に大きな動きがみられた。送料無料表示に対する消費者庁の見解やステルスマーケティングの規制などを受け、EC事業者はどう動くべきか。23年12月21日に行われた新井ゆたか消費者庁長官のコメントを含め、最新事情をまとめた。

物流の2024年問題を受けた「送料無料」表示について、消費者庁の最新見解

物流の2024年問題を受け、持続可能な物流の実現のため送料の具体的な記載が求められている。消費者庁は2023年12月19日、関係者等の意見を取りまとめた上で以下のような見解を提示した。

■送料負担の仕組みを表示すること
「送料当社負担」「○○円(送料込み)」など、消費者に送料の存在を示すような記載を行う。

■送料無料表示をする場合の対応
「商品をおすすめするための販売促進として無料にしている」などと送料無料の理由を明記したり、運送業者に対して契約に基づき適正な運賃を支払っていることなど、送料無料の仕組みを明記したりする。

関連記事:「送料負担の仕組みを明記」消費者庁、送料無料表示に対しての見解を発表

見解が示されてから2日後となる12月21日、中央合同庁舎で新井ゆたか消費者庁長官がオンライン記者会見を行い、「送料無料」表示の見直し等について記者の質問に答えた。

記者に見解への受け止めをたずねられ、新井長官は「送料は無料ではない、誰かが負担をしているということでありますので、消費者の方にそれを自覚していただくことが重要です」と答えた。

また、再配達をできるだけ少なくする取組が行われていることに触れたうえで「消費者の方々にはまとめ買いをするなど、できるだけ無駄な物流を減らしていくという努力を自覚的に行っていただきたいと考えています」と、消費者に対しても自覚を促した。

ステルスマーケティングに対する企業の現状

消費者庁は2023年10月1日からステルスマーケティング(以下、ステマ)の法規制を開始している。広告であることを隠して商品の宣伝を行うステマを規制し、消費者がより良い商品やサービスを自主的、合理的に選べるようにとの狙いだ。

ステマ規制の対象は広告主である事業者。消費者庁が規制の対象として提示しているものには、「事業者が自ら行う表示」のほか「事業者が第三者になりすまして行う表示」「事業者が明示的に以来・指示をして第三者に表示させたもの」などがある(※1)。

※1出典元:景品表示法とステルスマーケティング(消費者庁)
※関連記事:EC事業者は要チェック 消費者庁、2023年10月1日からステマ法規制開始発表

ステマ規制を受け、株式会社トリドリの調査では6割以上の企業がステマ規制対策の勉強会を実施している。また、SNS投稿を発信する際のルールが見直された企業も2割を超えた(※2)。

一方でインフルエンサーや投稿内容そのものへの対策を行っている企業はまだまだ多くない。規制対象は事業者でも、発信するクリエイター側の理解が追いつかなければ、何気ない投稿が法令違反とみなされることもあるだろう。

これを受け、クリエイターエコノミー協会は勉強会を実施し、インフルエンサーマーケティングのあり方が討論された(※3)。ステマ規制は、クリエイターの自由な発信にどんな影響を与えるか。今後も考えていかなければならないテーマだ。

※2 関連記事:ステマ法規制に関する企業の意識、対応状況を調査 インフルエンサーに対する周知やSNS投稿の確認が不足している現状が明らかに
※3 関連記事:10月1日からステマ法規制開始 「規制の対象になるのは広告主であり、事業会社」の現状を知る

2024年も引き続き物流危機や商品PRのあり方に注視が必要

会見で消費者行政政策の展望を聞かれた新井長官は「地方消費者行政のDX化(中略)を進めていく、まさにPIO-NET(全国消費者生活情報ネットワークシステム)を刷新していくということが重要」「デジタル化することによってより良い相談あるいは斡旋などをするより深い解決に向けた取組ができるように」と、デジタル化の推進に意欲を表した。

EC事業者は逼迫する物流の負担軽減についての議論を引き続き注視したい。また商品の記載やPRに関わる部分については早急に対応・教育し、法抵触しないよう気をつけていくべきであるとともに、勉強会等で最新情報を共有し、知識を刷新していくことが重要になるだろう。


記者プロフィール

奥山晶子

2003年に新潟大学卒業後、冠婚葬祭互助会に入社し葬祭業に従事。2005年に退職後、書籍営業を経て脚本家経験を経て出版社で『フリースタイルなお別れざっし 葬』編集長を務める。その後『葬式プランナーまどかのお弔いファイル』(文藝春秋刊/2012年)、『「終活」バイブル親子で考える葬儀と墓』(中公新書ラクレ/2013年)を上梓。現在は多ジャンルでの執筆活動を行っている。

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