買い物の主役「人」から「AIエージェントとの協働」へ マッキンゼー調査
マッキンゼー・アンド・カンパニー(以下、マッキンゼー)は2026年7月9日、AIエージェントが消費者の購買行動と小売・EC企業の競争環境に与える影響を分析した最新ホワイトペーパー「エージェンティックコマースにおける自動化の進み方」を発表した。
自動化の進み方を6段階で示す
本リリースに添付する図表では、エージェンティックコマースにおける自動化の進み方を6段階で示している。
◆レベル0:設定した条件に従って自動的に処理される仕組み
◆レベル1:判断を助ける
◆レベル2:選んでまとめる
◆レベル3:条件を決めて任せる
◆レベル4:方針に沿って継続的に運用する
◆レベル5:エージェント同士で進む取引
マッキンゼーはこの段階について、「重要なのは、自動化が『低いレベルから高いレベルへ一直線に進む』のではなく、カテゴリーや人との関わり方によって、委ねられる範囲が変わる点です」とコメントしている。

※画像元:エージェンティックコマースにおける自動化の進み方 (マッキンゼー・アンド・カンパニージャパン)
日用品や食品、消耗品のように繰り返し購入され、後悔の少ないカテゴリーでは自動化が進みやすい。その一方、高級品や人生の節目に関わる買い物など、自分らしさや納得感が重視されるカテゴリーでは、人の判断が残り続ける可能性がある。
旅行、家電、家具のように比較要素が多いカテゴリーでは、AIエージェントが候補整理や組み合わせを担いながら、最終判断は人が行うといった「選択的な自動化」が進むと考えられる。
「エージェントに正しく理解され、選ばれる」必要
AIエージェントが購買の入り口になると、小売企業にとっての競争環境は大きく変わる。
従来は検索結果、広告、店舗体験、ブランド認知、レビューなどを通じて、人の注意を引くことが重要であった。しかし、AIエージェントが商品を探し、比較して購入候補を組み立てるようになると、企業は「人に見つけてもらう」だけでなく「AIエージェントに正しく理解され、選ばれる」必要がある。
そのためには商品カタログ、価格、在庫、配送条件、返品ルール、ロイヤルティプログラム、プロモーション条件などをAIエージェントが読み取り、比較し、処理できる形で整えることが不可欠である。
自社の商品やサービスがどれだけ優れていても、情報が機械可読でなければ、AIエージェントの候補に入らない可能性がある。今後の小売・EC企業には、マーケティング表現だけでなく構造化されたデータ、API連携、透明なルール、説明可能な条件設計が求められる。
カテゴリーごとに最適な顧客体験を設計
マッキンゼーは本件について、次のようにコメントしている。
「日本市場では、購買体験の丁寧さ、信頼、配送品質、アフターサービス、会員制度などが競争力の源泉となってきました。AIエージェントが購買判断に介在するようになると、こうした強みを人間だけでなく、AIエージェントにも理解できる形で提示する必要があります。 たとえば、配送の正確性、返品のしやすさ、代替品の妥当性、ポイントや会員特典の適用条件、サステナビリティ情報、商品の品質保証などは、今後、エージェントが購買判断を行う際の重要な材料になります」
同社の分析では保守的なシナリオでも、2030年までにAIエージェントが世界の消費者向け商取引の約3兆〜5兆ドルを仲介する可能性があるという。
自動化によって顧客の手間を減らせる領域と、人が関わることで価値が高まる領域を見極め、カテゴリーごとに最適な顧客体験を設計することが重要となる。急速に発展を続けるAIエージェントの動向を、引き続き追っていきたい。


