永遠のテーマ?CVRの鍵を握るショッピングカート

笹本 克

ウォッチャーズレポート【爆買いは越境ECへ】
https://www.ecnomikata.com/column/10259/

CVRに大きな影響をもたらすもの

 読者のみなさんは、コンビニやスーパーで買い物をした時に、名前や住所を尋ねられたことがありますか?

私は、かつて今まで、リアルの買い物をした時に名前を聞かれたことはありません。もちろん予約や出前を頼んだ時には名乗りますが、最近では、何度か利用したことがあるタクシーや宅配ピザなどは、自宅の電話から頼めば、「○○2丁目の笹本様でよろしいでしょうか?」と聞いてくるので、詳しい住所まで言う必要がないのです。

 たぶん、こちらから架けた電話の番号がお店の電話機に自動的に表示され、(NTTナンバーディスプレイサービス)自動的に過去の履歴を呼び出し、我が家の住所が自動的に表示されるという様な仕組みかと思います。

 また、コンビニなどでは、クレジットカードはもちろん、スイカなどに代表されるプリペイドカードや様々な電子マネーなどでも簡単に決済できる様になっています。気がつけば、受注→決済の手続きは、リアルの世界でも相当な進化を遂げています。

 ネット通販が世間一般に広まりだしてから、およそ15~16年経っています。この期間に、モールというプラットフォームから、受注管理ソフト、CMSやCRM関連、あるいは様々な分析なツールなど、大変な進化を遂げていますが、ショッピングカートだけは「小手先」レベルの“改善”に留まっているような気がします。私が思うに、ショッピングカートについては、「進化」と呼べるまでの変化はなく、少し厳しく言えば旧態依然のままだと思うのですが、読者のみなさんのご感想はいかがでしょうか。

 ネットショップにおける最も重要な指標=コンバージョンレート(=購買率=CVR)。これについては意見を挟む余地がないかと思います。コンバージョンレートが向上すれば、一定来客数(=サイトへの訪問者数=ユニークユーザー数)当たりの売上&粗利額が向上するということでもあるので、たとえば、検索広告などのクリック単価が高くなっても採算がとれるということにもなります。簡単に言えば、今まで買えなかった広告も買える様になる。つまり「コンバージョンレートの向上」は、集客力の向上にもつながるのです。

 だから、私がコンサルティングをする時には、まずは、様々なサイトの改善や訴求力の向上を行い、「今まで買えなかった広告」が買えるレベルまでコンバージョンレートを向上させて、その後で一気に「集客増」のアクションを取るという手法を使っています。

 例えば、1000人の来訪者が来たとき、5件の注文が来る状態で集客するのと、20件の注文が来る状態にしてから集客するのとでは、費用対効果が4倍違うわけですが、仮に受注1件当たりの平均粗利額が5000円だとした場合、前者は総額で2万5000円の粗利、後者は10万円の粗利。仮に1000人の集客に5万円かかるとすれば、前者は赤字。つまり、広告は使えない。後者は黒字。広告を使える。という図式です。

 これだけ重要なコンバージョンレートに最も大きな影響があるのが、ショッピングカートです。

 実は、私のコンサルタントとしての持ちネタの一つが、ショッピングカートの改善。今までの多くの事例からすると、これを改善しただけで15~40%程度売上が向上しています。ちなみにカートの改善は、単にCVRの向上だけでなく、ついで買いの促進や、信頼感の向上により高額商品のお客様の決済も促すことなどを通じて、平均顧客単価を向上させる効果もあります。

 従って、私のクライアントのネットショップさんには、自分が使いやすいカートではなく、「多少の費用がかかっても、売れるカートを選びなさい」とアドバイスしています。

 場合によっては、相当の労力を費やすことを承知で、「今のカートではなく、○○を使いなさい」とカートの引っ越しを指示することもあります。それほどショッピングカートは重要なのです。

近い将来、「7掛け商品」はモールから脱出?

 大手モールの様々な課金を簡単に試算してみると、NB商品の大多数を占める、いわゆる「7掛け商品」は、モールに出店している限りは、どう努力しても採算が合わない状態になっていると判断しています。定価から1割引きで売れば、(90-70)÷90=約22%となります。ここから従量課金分や決済手数料を引いてとなると相当の「ローコストオペレーション」が必要ですが、それでも損益分岐点を超えてしまった感があるのです。

 近い将来、多くの「7掛け商品」はモールから脱出する方向に動くのではないでしょうか。昨年から出店料無料で攻勢をかけたモールの動向は気になるところですが、いかんせん、お客様の立場から見て買いにくいし、書籍で有名なメガショップも7掛け商品の粗利の半分を持って行く構造になっています。これらの環境から推測すれば、集客に課題はあるものの改めて「自社ドメインショップ」に注目があつまるのではないかと思っています。

 さて、話は冒頭に戻りますが、ショッピングカートは旧態依然。私が思うカートの進化とは、たとえばスマホでショッピングをして「カートの中」に入ったら、スマホの「カメラ」が起動し、名刺とクレジットカードを写せば「決済終了」名刺の住所に品物が届く。既にせめてこの程度の進化は遂げていてもいいと思っているのですが。そろそろ音声入力などの技術も確立してきたとも思います。

 CVRの大きな鍵を握るショッピングカート。他にも多くのアイデアがありますが、CVR向上のための様々な機能を付加してゆくことで「自社ドメインショップに再注目」のトレンドを起こせるかどうか?

 ショッピングカートを提供している皆さんの奮起を期待しているところです。


著者

笹本 克 (Sasamoto Katsu)

ECコンサルタント&プランナー

コンサルタントおよびWEBプロデューサーとして全国各地で有名ネットショップを輩出。上場企業から地場産業まで規模を問わず幅広い業種で多くの実績を持つ。受賞ショップも複数存在。

ジャパンEコマースコンサルタント協会(JECCICA)プロフィールhttps://jeccica.jp/page-2/page-26/