富士通が銀座三越で服のシェアリングサービスのトライアル検証を実施

ECのミカタ編集部

富士通株式会社は、スマホアプリを通してオンラインと実店舗で商品のシェアリングを実現するシステムを開発し、株式会社三越伊勢丹(以下「三越伊勢丹」)の従業員向けにシステムの有用性や事業性の検証を目的としたトライアル検証を行うことを公表した。

顧客ごとのライフタイムバリュー最大化の実現へ

開発されたシステムでは、アパレルメーカーや百貨店が商品データを登録するだけで、スマホアプリを利用したシェアリングサービスを簡単に始めることが可能となる。

顧客は、サービスを通して普段馴染みのない服を実店舗で試着し、スマホアプリで手軽にレンタルすることができるようになる。また、実店舗の販売員がチャットでコーディネートを提案するなど、既存顧客や潜在顧客に対して実店舗の強みを活かした付加価値を提供し、顧客ごとのライフタイムバリューの最大化を実現することも狙いだ。

トライアル検証は、2018年6月18日から顧客向けに実施し、2018年8月1日からは、システムの有用性や事業性の検証を目的としたトライアル検証を行う予定となっている。

トライアル検証の概要

トライアル検証の概要商品QRコード読み取りイメージ(同社資料より)

◇実施目的:シェアリングシステムの導入により下記を検証

実店舗における新規顧客の獲得、既存顧客の利用頻度、利用シーンの変化および実店舗とスマホアプリをシームレスにつないだユーザーエクスペリエンスにおける顧客満足度の変化

◇実施場所:銀座三越 3階

◇実施期間と対象者:
三越伊勢丹の従業員向け:2018年6月18日から6月28日
顧客向け:2018年8月1日から11月30日

◇トライアル検証内容:
銀座三越向けのスマホアプリを利用して、銀座三越の実店舗で取り扱うブランドのレンタル用に用意された商品の中から、気に入った服をレンタル(有料)。

1.スマホアプリで実店舗にある商品のQRコードを読み取り、お気に入りの商品を登録。

2.レンタルしたい商品をアプリ内検索か、お気に入り登録の中から選択。

3.事前に登録したクレジットカードによる決済で手続きを完了。

4.決済後、実店舗のスタイリストがタブレットで顧客のスマホ画面に表示されるQRコードを読み取り、商品の貸出を記録。該当の商品を梱包して顧客に渡す。

※1.~4.は来店試着した場合のレンタルの流れの一例。来店なしに予約することも可能。

その他、スタイリストが、商品を組み合わせたコーディネートを行い、実際のスタイリング写真などの情報を顧客に送信する機能や、実店舗でスタイリストにフォロー申請することで、チャットを通じたスタイリング相談などができる機能も検証予定となっている。

銀座三越ならではの「おもてなし体験」創出へ

今回のトライアル検証では、顧客は、スマホアプリを利用して、銀座三越で取り扱う対象商品に付いたQRコードを読み取り、商品をレンタルすることができる(有料)。また、実店舗でお気に入り登録した商品やアプリ内で検索して興味をもった商品を、実店舗の営業時間外も含め、スマホアプリを通じてレンタル予約が可能となる。

さらに、バーチャルコーディネートやチャットを通じたスタイリストへのスタイリングの相談ができる機能などの活用も検証し、シーンや目的に応じた特別な日の上質な装いのコーディネートをサポートし、銀座三越ならではの「おもてなし」を体験してもらうことを目指す。

さらなる展開へ

富士通は、今回の検証の結果を通して、今後は機能強化などを図り、小売業およびアパレル業向けのサービスとしての提供を検討していくとしている。

その背景には、近年、インターネットやスマートフォンの普及以降、ECサイトなどを運営する企業が、実店舗と連携したさらなるデジタル化に踏み出そうとしていることがある。一方で、実店舗を中心にビジネスを行う小売業においても、新たなサービス展開に向けて、サービストレンドやテクノロジーを活用したビジネスモデル変革を加速させているところだ。

そこで、同社は、デジタル技術を活用し、実店舗をもつ小売業やアパレル業の強みである対面での行き届いた接客を活かした新たな顧客体験を創出するサービスを提供することにしたのだ。

EC市場やネットを活用したサービスの利用は拡大の一途をたどっている。一方でリアル店舗とネット上のショップには双方に利点があるのも事実だ。その双方の利点を融合する試みはオムニチャンネル化の文脈でもさまざまな施策が試されているところでもある。

各種のデータなどでも、ネットとリアルを融合させて展開することで、売上の上でも大きな成果につながることが実証されつつあり、テクノロジーの分野で日本をリードしてきた富士通が、老舗百貨店である三越伊勢丹と手を組んで行う今回の施策は、荒波に揉まれる百貨店業界に新しい風をもたらすだけでなく、オムニチャンネル化という文脈、そして所有の概念に一石を投じるシェリングが融合して、各分野に新しいページを開いていく大きな可能性を持っていると言えるだろう。

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