1年でLINE転換率が3倍(12%)に――少子化でも「月商億超え」を維持する知育玩具ECのギフト戦略

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ECのミカタ編集部

エデュテ株式会社 代表取締役 中尾信也氏

出生数の減少にともない、縮小が続く国内ベビー・キッズ市場。その逆風のなかで「月商億超え」を達成し続けるEC事業者がいる。木のおもちゃ・知育玩具の専門メーカー、エデュテ株式会社だ。

同社の強みは、EC販売75%、そのうちギフト需要が45%という数字に象徴される「ギフト特化型」の販売戦略にある。しかしその裏側には、SNSでの認知獲得から、LINEによる顧客の囲い込み(ナーチャリング)、そしてギフト品質を担保する物流の内製化まで、一気通貫で緻密に設計された仕組みが存在する。

毎年新規顧客を獲得し続けなければならない市場で、いかにLTVを最大化してきたかをエデュテ株式会社 代表取締役の中尾信也氏が語った。

●本記事は2026年3月開催「ECのミカタ カンファレンス」で行われた、エデュテ株式会社 代表取締役 中尾信也氏のセッションをレポートしたものです

顧客が毎年“総入れ替え”になる特殊市場で挑む「4段階の販売ファネル」

「遊びながら学ぶ」をテーマに0〜3歳向けの知育玩具・ベビー&キッズ商品を展開するエデュテ株式会社。積み木をはじめとするオリジナル商品に加え、世界12ブランドの輸入も手がける。販売の75%はEC経由で、楽天市場、Amazon、自社ECサイト、ギフトモール、Yahoo!ショッピングがその中心を担う。

EC売上のうち、ギフト需要と明確に把握できるものが45%に上る。名入れや別住所配送がある注文がその指標だ。しかし実態はさらに大きいと中尾氏は見ている。

「おじいちゃん、おばあちゃんが子供の誕生日に『1万円渡すから何か買っといて』と親に頼むパターンがある。残りの55%の中にも、かなりこのギフト需要が入っているのではないかと予測しています」(中尾氏)

この市場が一般的なEC市場と大きく異なるのは、顧客の入れ替わりが構造的に避けられない点だ。コアターゲットは0歳(出産祝い)・1歳(初めての知育)・2歳(イヤイヤ期)・3歳(ごっこ遊び)。子どもが成長し幼稚園に入ると、顧客はブランドを卒業していく。毎年約70万人の新生児が生まれる一方で、毎年ハウスリストをまるごと更新し続ける必要があるのだ。

「一般的な商品と違い、一旦顧客を獲得したらそこからずっとLTVが上がっていくという話ではない。ずっと新規の顧客を獲得し続けていく仕組みを作っていかなければいけない」(中尾氏)

この構造的制約に向き合うために、同社が設計したのが「認知 → 流入 → 囲い込み → リピート」という4段階の販売ファネルだ。

画像提供:株式会社エデュテ株式会社(カンファレンス登壇資料より ※以下同じく)

インスタは売上を追わない! 9.2万フォロワーを支える「エンゲージメント最優先」のSNS設計

ファネルの入口である「ブランド認知」を担うのがSNSだ。SNS総フォロワー数は9.2万人(2025年12月時点)。主力はInstagramで、3.2万人のフォロワーを抱える。ただし中尾氏が最も重視するのは、フォロワー数ではなく「エンゲージメント率」だ。

「フォロワー数が多いからいいという話じゃない。エンゲージメント率が高くないとコンテンツのアクセスが広がっていかない。卒業していったお客様、動きがない人たちは(リストから)外していく。たまっていくんじゃなくて抜けていく数も相当ありながら、年間1000〜2000件ずつ増やしていくイメージです」(中尾氏)

インフルエンサー活用においても同様の思想が貫かれている。フォロワー10万人・エンゲージメント率0.2%のアカウントより、フォロワー1万人・エンゲージメント率5%のアカウントを選ぶ。実際、「サムブロックス」という算数を教えられる積み木を、ある数学者が紹介したことでバズが起き、クリスマス商品が一気に売れた実績がある。子ども向けコンテンツを普段は発信しないアカウントでも、製品の本質的価値と視聴者の関心が重なれば爆発的な反応が生まれているという。

自社の投稿方針も徹底している。ブランド認知フェーズでは「売り」の要素はほぼ入れない。Yahoo!知恵袋などを読み込んで研究した「ママのお悩み」に答えるシリーズを中心に、顧客目線のコンテンツを発信し続けている。

「インスタの投稿に関しては、『売上は一切追わなくていい。インプレッションとエンゲージメントを追ってください』という運用にしています」(中尾氏)

また、各チャネルには明確な役割が割り当てられている。TikTokは認知拡大の次の注力先、Threadsは読書習慣のある購買力の高い層との親和性が高いとして強化中。YouTubeは「商品の取扱説明書」と位置づけ、遊び方動画や保育士による紹介映像を掲載する。

SEOでは「1歳 誕生日」「知育玩具」などの購入動機に直結するキーワードを狙い、ブラックフライデーの1〜2週間前にインフルエンサーを集中投下してクリスマス需要を一気に取りにいく戦術も実践している。

LINE転換率が1年で4%から12%へ急伸。「購買タイミングの先回り」で想起を促す

SNSやSEOで認知を獲得した顧客が各ECチャネルで購入したあと、次の舞台となるのがLINEだ。同社はLINEを「一度購入体験のある方を囲い込む場所」と明確に定義している。

楽天市場ではLINEオプションを活用して購入後フォローを行い、自社サイト(本店)では「1年間保証」をLINE公式アカウントの友だち登録と紐づけることで自然な登録を促す。こうして囲い込んだ顧客に対し、ステップLINEとセグメント配信を組み合わせてナーチャリング(顧客育成)を実施する。

ここで最も重要なのが「タイミング」の設計だ。

「LINEのステップ配信は、いつ何を送るかが大切。1歳の誕生日プレゼントを買っていただいたお客様は、2歳でも買ってくれる確率が高い。そのため、だいたい誕生日の2カ月前くらいに『2歳の誕生日はこういうおもちゃがお勧めです』という案内を送ったりしています」(中尾氏)

顧客が次のプレゼントを検討し始めるタイミングを先回りして、自社ブランドを「想起」させる。この緻密な設計が、ダイレクトに数字へ直結している。

現在のLINE経由の転換率(CVR)は月平均で12%。ある年の1月の実績は、訪問者1667人・転換率12%・客単価7113円で、LINE経由の売上は142万円超を記録。さらにクリスマス需要が集中する12月には、転換率23%、LINE経由の売上だけで約976万円を叩き出した。

注目すべきは、その成長スピードだ。

「昨年はLINEの転換率を1年で4%から8%ほど引き上げました。顧客をしっかり囲い込み、タイミングを捉えてLTVを上げていく戦略が非常に効いていると思っています」(中尾氏)

EC全体の平均転換率が一般的に1〜2%台といわれる中、チャネル限定とはいえ12%〜23%という数字は驚異的だ。「ちょうどいいタイミングに、ちょうど必要なものを届ける」というマーケティングの原則を、仕組みとして美しく実装した結果と言える。

「できないなら自分で作る」――3PLの限界を突破した物流子会社設立とギフト品質の追求

LINEによる高いリピート率や顧客満足度を最後の最後で支えているのが、物流の内製化だ。エデュテはギフト特有の高度な要求に対応するため、2020年に物流子会社「株式会社Logico(ロジコ)」を設立した。

きっかけは、外部の3PL(物流アウトソーシング)企業との交渉の限界だったという。

「外部にお願いしても『できない』と言われることが多く、それならもう自分で作るしかないとなって設立したのが、物流子会社のロジコです」(中尾氏)

ギフト需要には、通常のEC物流にはない非常に高い要求水準が存在する。同社が実現している「当日名入れ × 即日出荷 × 土日発送」はその最たる例だ。名入れ用のレーザー機器を倉庫内に自社設置し、ミスが許されない刻印作業を内製化。さらに、熨斗(のし)への名前記入や紙巻きラッピングの品質を担保するため、デパート出身の熟練スタッフを採用し、その技術を社内に蓄積した。

「ギフトですから、箱に入れたときのリボンが潰れていないか、中の梱包物がどう美しく詰め込まれているかといった、細かい配慮が欠かせません。そこを怠ると、届いたときにお客様がすごく残念な気持ちになってしまう。だからこそ、何度も自分宛てにテスト発送させて品質を突き詰め、納得したものだけをお届けできるようにしています」(中尾氏)

中尾氏が最後に強調したのは、「各施策が独立して機能しているのではなく、全体が一つの流れ(エコシステム)として設計されている」という点だ。

SNSでエンゲージメントを重視してブランドのファンを育て、LINEで適切な購買タイミングを逃さずに想起させ、物流の内製化によって最高峰のギフト体験を届ける。どれか一つが欠けても、この高い転換率や売上は生まれない。

出生数が減り続ける市場での「月商億超え」は、単なる目先の施策の積み上げではなく、ビジネス構造そのものの設計から生み出された必然の結果なのだ。

中尾 信也
エデュテ株式会社 代表取締役
大学時代をアメリカ・ルイジアナ州で過ごした際に目の当たりにした人種差別や社会格差から、「教育がないと人は幸せになれない」と確信。卒業後、エデュテの前身であるコムテック株式会社の設立メンバーとして参加。同社を2003年にウォルト・ディズニー・ジャパンへ売却後、エデュテ株式会社を設立。知育玩具メーカーとして歩みを始め、2026年現在は世界12ブランドを輸入。自社ブランドとしてもEduteの積み木を展開している。ビジョンは「感動子育て応援カンパニー」。子育ての感動に寄り添う商品・サービスを届けることを信念としている。