松屋フーズ、ECモール賞総なめの裏側とTikTok Shop急成長の理由 なぜ外食出身のチームがECで勝てたのか?

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ECのミカタ編集部

株式会社松屋フーズ 戦略事業部外販グループ グループマネジャー 岩田幸恵氏

牛丼チェーンの外食ノウハウしか持ち合わせていなかった松屋フーズが、ECへの本格参入から約7年で売上高48億円(2023年)を達成し、主要ECモールの年間賞を総なめ。さらに2025年にはTikTok Shopへ参入し、出店当月は月商3,800万円、翌々月には8,500万円まで急成長させた。

この成長の背後で、同社は「商品力・販売力・配送力」という3つの力を愚直に磨き続けてきた。同時に、モール横展開やインフルエンサー施策といった打ち手を掛け合わせ、成果を拡大させている。本稿では、その歩みと実践を紐解く。

※本記事は2026年3月開催「ECのミカタカンファレンス」で行われた、株式会社松屋フーズの岩田幸恵氏と、同社とGastroduceJapan株式会社のジョイントベンチャーである株式会社モールハックの若松友貴氏によるセッションをレポートしたものです

外食チェーンのEC参入から48億円へ──成功の核心は「3つの力」

2017年、松屋フーズの岩田幸恵氏は、実店舗や秘書・総務・広報といった異畑からEC部門に配属された。手探りのスタートからコロナ禍を経て販路を拡大し、2023年には同社のEC売上は48億円を達成。同年、主要5モールの年間賞を受賞(※1)するという業界でも稀な実績を残した。

「私たち松屋フーズが大切にしていることは、商品力・販売力・配送力、この3つの力です。これらが揃ったときに、ECは爆発的な成長を遂げます。逆に言えば、どこか一つでも欠けると途端に伸び悩みます」(岩田氏)

※1:楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2023(惣菜・食材ジャンル 大賞)、Yahoo!ショッピング Best Store Awards 2023(惣菜、食料品部門1位、肉・肉加工品部門 2位)、Amazon.co.jp 販売事業者アワード2023(食品・飲料・お酒部門 大賞)、au PAY マーケット BEST SHOP AWARD 2023(惣菜・食材カテゴリ大賞)、dショッピング年間ランキング2023(総合2位)


●商品力:「答えはすべてお客様が持っている」――ヒットと失敗からの学び

松屋フーズのEC黎明期にあたる2018年、同社の武器は牛めし・カレー・豚めしの3種類のみだった。そこから生まれた最初のヒットが「全部盛り」だ。

「当時の全部だから『全部盛り』という名前をつけました。シンプルですが、お客様を迷わせない最強のネーミング。まずはここから始まりました」(岩田氏)

現在は単品約40品目、常時販売しているセット商品は約500セットにまで拡大。その過程では「おまけ戦略」も功を奏し、“お試し感覚”で接点を増やしながら購買機会を広げていった。原価が上がってもおいしさを優先し、カルビ焼肉・豚生姜焼肉といった冷凍トップシール品や、牛タン・もつ鍋といったEC市場の大きい領域にも挑戦している。

一方で、冷凍ごはんや海鮮系(イクラ・カニほぐし等)はユーザーから選ばれなかった。

「牛めしの具と冷凍ごはんをセットにすれば売れそうだと考えましたが、お客様の答えはNOでした。売れなかった理由の一つは、『主語がお客様ではなく自分たちだったこと』。二つ目は、『お客様の利用シーンの想起が足りていなかったこと』です。お客様にとって松屋は肉の専門であって、海鮮を買う理由がなかったのです。また、売りやすい売価がつけられるという下心もありました。こうした下心はお客様に見抜かれてしまい、結果として選ばれません」(岩田氏)

こうした試行錯誤を経て、昨今のコスト高騰もあり、松屋は原点に回帰している。

「シュクメルリやうまトマハンバーグなど、これぞ松屋と言える商品に注力しています。実店舗でヒットして愛されている味をECで展開する。ブランドの強みを再定義するような瞬間でした」(岩田氏)

岩田氏が辿り着いたのは、「爆発力のある点の商品」と「ブランドを支える面の商品」を両輪で持つという考え方だ。このバランスが、ECにおける安定と成長の双方を支えている。


●配送力:物流はコストではなく「最大の営業力」

物流をコストではなく「最大の営業力」と考えている松屋フーズ。朝8時までの注文は当日出荷し、土日も止めないという。

配送スピードに加えて重視しているのが「開封体験」。物流を顧客体験の一部として捉え、リピーター獲得への投資と位置づけている点が特徴的だ。

「お客様が箱を開けた時の美しさにこだわっています。チラシは入れず、商品がびっしりと美しく並んでいる。この視覚的な体験がリピーターを生むと確信しています」(岩田氏)


●販売力:お客様の生活圏に出向く「モール横展開」
松屋フーズの販売戦略のベースにあるのは、「お客様のライフスタイルに店を合わせる」という思想だ。

「楽天経済圏、携帯キャリア系モール、JRE・ANA・JALといったマイル経済圏など、お客様が普段使っている生活圏に出向いていく。この横展開によって強固な土台を作ってきました」(岩田氏)

それぞれの経済圏に「松屋の店」を置くことで購買動線を最短化し、安定的な売上基盤を築いている。そして2025年、日本でローンチされたタイミングでTikTok Shopにも参入した。

●以上、画像提供:株式会社松屋フーズ(カンファレンス登壇資料より)

TikTok Shopで初月3,800万円――食品との好相性と“面”での展開

このTikTok Shop参入を支えたのが、松屋フーズの戦略パートナーであり、モール運用やインフルエンサーマーケティングを支援する株式会社モールハックの若松友貴氏だ。松屋フーズのTikTok Shopにおける販売設計やクリエイター活用も同社が担っている。

若松氏は、早い段階から食品とTikTok Shopの相性に確信を持っていた。

「動画ではシズル感はもちろん、コスパや利便性も伝えられる。静止画では伝えられる情報に限界があるので、TikTok Shopは確実に注力すべきチャネルだと判断しました」(若松氏)

松屋フーズはTikTok Shopにおける冷凍便の解禁を待って、2025年10月6日にTikTok Shopに出店。その後の立ち上がりは非常に速かった。

「出店から約1週間で日商30〜40万円になり、月末で売上が3,800万円。翌月は5,800万円、翌々月には8,500万円とトントン拍子に上がっていきました」(若松氏)

この初速を支えたのが、インフルエンサー(TikTok上のクリエイター)を活用した露出設計だ。モールハックは、食品に特化したクリエイター600人超のネットワークを構築しており、松屋フーズが出店した際にはその中から選ばれた約200人が発信を開始。「どこを見ても松屋」という状態を意図的につくり出し、動画とライブを同時多発的に展開することで、認知と購買を「面」で押し上げていった。

こうした取り組みは、出店時の初速づくりだけで終わらない。バレンタイン後の解体セールや新生活セールなど、月ごとのテーマを設定し、クリエイターに先回りして動いてもらうことで、継続的な売上を生み出している。

売上はどう生まれるのか──動画・ライブ・ショップタグの役割分担

若松氏が示したTikTok Shopにおける売上構成の目安は、動画UGCと広告が約50%、有力なLINEコマーサーによるライブが約20%、ショップタグからの流入が約20%だ。

動画UGCは、多くのクリエイターに投稿してもらい、成果の出た動画に広告をかけることでインプレッションを伸ばす。一度バズった動画は売上を継続的に支える役割を担う。一方でライブコマースは、その場で売り切る性質が強く、有力インフルエンサーとの連携やイベント設計によって、1日で数百万~1,000万円超の売上を生むこともある。

「動画で認知を獲得し、ライブで刈り取ることもできるし、ライブを同時多発的に実施することで売上をつくることもできます。一つの動画を見ただけではお客様は購入しません。複数のクリエイターの発信が重なり、自分に関係があると感じたときに購買が生まれると考えています」(若松氏)

ショップタグからの流入も増加しており、商品数の拡充によって「面」での販売が広がりつつある。

●以上、画像提供:株式会社モールハック(カンファレンス登壇資料より)

「売上を止めない」TikTok Shop運営のポイント

若松氏が、売上を伸ばす施策と同じくらい重要と語るのが、売上を止めないための運用設計だ。食品は低評価(悪いレビュー)がつきやすく、TikTok Shopでは低評価が増えるとアフィリエイト機能が停止され、販売が鈍化するリスクがある。また、配送遅延や在庫切れが発生することで売上が急減することもありえる。

「在庫切れを起こさないことが重要です。基本的に2営業日以内に配送するルールもあるので、配送体制を整えることが最も効果の高い施策になります」(若松氏)

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外食ノウハウしか持たなかったチームが、EC売上48億円と主要5モール制覇を実現し、さらにTikTok Shopでも成果を上げた。その背景にあるのは、商品・販売・配送という土台を磨きながら、それをどこで増幅させるかを見極める戦略だ。

松屋フーズの取り組みは、食品ECで成果を伸ばしていく上で、一つの指針となりえるだろう。

株式会社モールハック 取締役副社長 若松友貴氏

岩田 幸恵
株式会社松屋フーズ 戦略事業部外販グループ グループマネジャー
2017年11月着任後、楽天市場、Amazonに加えて、aupayマーケット、dショッピング、Qoo10など多くのモールへ出店し急拡大。商品の開発なども積極的に取り組み、商品数も拡充させ、各モールの年間受賞を総なめにした2023年には約49億円に。約6年で約10倍の売上高まで飛躍的に成長させてきた。

若松 友貴
株式会社モールハック 取締役副社長
代表ECコンサルタント。一橋大学商学部商学科卒。楽天株式会社の食品ECコンサルタントを経験し、社内MVPを5度受賞。2017年食品ジャンルに特化した通販のサポートを行うGastroduce Japan株式会社を設立。SOY(楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー)含むたくさんの年間MVP店舗を輩出中。


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