X運用で差がつく企業の発信戦略 変化するXで成果につなげる5つの視点【ECを伸ばすSNSマーケティング最前線 第3回】

最終更新日:

小川 帆奈美

Xは、Instagramとは異なり、テキストを中心に情報が広がるプラットフォームです。拡散力がある一方で、炎上リスクや運用負荷を懸念し、活用に踏み出せないEC事業者も少なくありません。「EC事業者が今見直すべきSNS運用」を全4回で解説する本連載、今回はSNS運用改善を支援する株式会社toの小川帆奈美が、X運用と相性の良い業種、苦戦しやすい業種、そして成果につなげるための考え方について解説します。

●過去コラムはこちら!
【第1回】着実に変わり続ける企業のSNS運用――SNSマーケティングの最前線
【第2回】Instagram運用で広がり続ける差 選ばれるブランドが実践する最新インスタ運用

変貌を遂げたXの現在地と、ビジネス利用のリアル

Xは、かつてのTwitter時代から大きく姿を変えてきました。

リアルタイム性の高い情報収集やユーザー同士の会話、企業と生活者の距離の近さは現在も大きな特徴です。一方で、表示面や認証制度、広告環境、投稿フォーマットは変化し、企業が成果を出すには、以前よりも運用設計が求められるようになっています。

特に大きいのが、投稿の届き方です。買収前のTwitterでも、ユーザーの過去の反応やフォロー関係をもとに、興味を持ちそうな投稿を優先表示する仕組みは存在していました。ただし、タイムラインはフォローしているアカウントの投稿が中心でした。現在のXでは「おすすめ」が前面に出ており、フォロー外の投稿も積極的に表示されます。つまり、フォロワーに情報を届ける場から、X全体の中で興味関心の近いユーザーに発見してもらう場へと変化したのです。

EC事業者にとって、これはフォロワー数が少なくても、投稿の内容次第で新しい顧客候補に届く可能性があることを意味します。一方で、発信テーマが曖昧では、誰に届けるべき投稿なのか判断されにくくなります。商品紹介だけでなく、開発の裏側、担当者の気づき、お客様の声、使用シーン、よくある悩みなど、自社だから語れるテーマを継続して発信することが重要です。

Instagramがビジュアルや世界観を伝えるのに強い一方、Xは言葉によってブランドの温度感や考え方を伝え、会話を生み出しやすい媒体です。ただし、更新頻度やリアルタイムな対応、言葉選び、炎上リスクの管理も欠かせません。だからこそ、まずは「誰に、何を伝え、どの行動につなげるのか」を整理することが、X活用の第一歩となります。

X運用と相性が良い業種・商材

X運用と相性が良い業種・商材

Xと相性が良いEC事業者には、いくつかの共通点があります。

1つ目は、ユーザーが日常的に話題にしやすい商材を扱っていることです。
食品、飲料、菓子、コスメ、アパレル、雑貨、エンタメ関連商品などは、ユーザーが「これ好き」「食べてみたい」「使ってみたい」「誰かに教えたい」と感じやすく、投稿や会話のきっかけになりやすいジャンルです。

特に食品や菓子は、季節、気分、食べ方、アレンジ、コンビニやスーパーでの発見など、日常の中で話題化しやすい特徴があります。EC専売の商品であっても、「届いた」「試してみた」「ギフトにした」といった投稿が生まれやすければ、Xとの相性は高いと言えます。

2つ目は、ブランドや商品の“語れる要素”があることです。
たとえば、開発背景、原材料へのこだわり、職人性、地域性、社会的な取り組み、ブランドの思想などです。Xでは、商品の見た目だけでなく、その裏側にあるストーリーや考え方が共感を生むことがあります。

3つ目は、キャンペーンや限定企画との相性が良いことです。
Xは拡散性が高いため、プレゼントキャンペーン、期間限定販売、先行予約、コラボ企画、再入荷告知などと相性があります。特に「今知っておきたい」「参加したい」「共有したい」と思える情報は、X上で広がりやすい傾向があります。

4つ目は、担当者の個性や企業の温度感を出せる体制があることです。
Xでは、あまりにも無機質な告知だけでは反応が生まれにくい場合があります。もちろん、企業アカウントとしての品位やルールは必要ですが、適度な人間味や会話の余白があることで、ユーザーとの距離は縮まりやすくなります。

つまり、X運用で伸びやすいのは、商品そのものに話題性がある企業だけではありません。商品をめぐる会話をつくれる企業です。

X運用に苦戦しやすい業種と、その突破口

一方、どの業種でも同じように成果が出るわけではありません。業種によって、フォロワーを増やしやすいか、インプレッションを伸ばしやすいかは大きく異なります。

特に、高単価で購入頻度が低い商材、専門性が高く説明に時間がかかる商材、BtoB向けの商品・サービス、検討期間が長い商材は、フォロワーやインプレッションの獲得に苦戦しやすい傾向があります。これらの商材は、ユーザーがX上で気軽に反応しにくい特徴があります。商品について話題にする機会が少なかったり、購入までに複数の比較検討が必要だったりするため、単純な商品紹介だけでは投稿が広がりにくいのです。

しかし、だからといってX運用に向いていないと考える必要はありません。苦戦しやすい業種ほど重要なのは、商品ではなく、ユーザーが興味を持つテーマを起点に情報を発信することです。

たとえば、家具やインテリアであれば、商品紹介だけではなく、「暮らし方」「部屋づくり」「収納の悩み」「季節の模様替え」などのテーマに広げられます。美容機器や健康関連商材であれば、商品のスペックではなく、「日々のケア習慣」「よくある悩み」「選び方」といった情報が興味を集めやすくなります。

BtoB向けの商材であれば、商品紹介よりも、「業界あるある」「担当者が抱えやすい課題」「業務に役立つ知識」「共感できるネタ」などを発信する方が反応を得やすいでしょう。専門性の高い商材も、「分かりやすく教えてくれるアカウント」として信頼を積み重ねることで、長期的なファンを獲得できます。

X運用で成果が出ない企業の多くは、「商品のPR」を中心に発信してしまっています。しかし本当に重要なのは、ユーザーが日常の中で関心を持ち、思わず反応したくなるテーマへと変換することです。

売りたい商品から考えるのではなく、顧客の悩みや疑問、知りたいこと、共感できることから発信を設計する。この視点こそが、苦戦しやすい業種でも成果を伸ばす突破口になります。

Xの強みは「拡散」だけではない

Xというと、どうしても「バズる」「拡散する」というイメージが強くなりがちです。

もちろん、Xの拡散力は大きな魅力です。1つの投稿がリポストされ、多くのユーザーに届くことで、短期間で認知が広がることがあります。新商品やキャンペーン、話題性のある企画では、この拡散力が大きな武器になります。

しかし、Xの価値は拡散だけではありません。むしろ、EC事業者にとって重要なのは、日々の小さな接点を積み重ねられることです。投稿への返信、ユーザーの声への反応、商品に関する質問への回答、購入報告へのお礼、再入荷を待つ声への案内。こうしたやり取りは、一つひとつは小さいかもしれませんが、ブランドへの親近感や信頼感を育てます。

また、ECでは、商品ページだけでは伝えきれない情報が多くあります。どんな人が運営しているのか、問い合わせにどう対応してくれるのか、商品にどんな思いを込めているのか、ユーザーの声を大切にしているのか。一方、Xはこうした企業の姿勢が見えやすい場所です。そのため、X運用では「どれだけ大きく拡散されたか」だけでなく、「どのような会話が生まれたか」「どのような声が集まったか」「ブランドへの印象がどう変わったか」を見る必要があります。

【改善事例】投稿のコメント数が4倍に! 告知中心の運用から会話が生まれる運用へ

▼課題
あるEC事業者では、Xを主にキャンペーン告知や新商品情報の発信に使っていました。

新商品発売に先立って期待感を持たせる内容となっており、分かりやすくまとめられた投稿でした。しかし、反応は限定的で、フォロー&リポストキャンペーンのときだけ一時的に反応が増え、通常投稿では“いいね”やリポストが伸びにくい状況でした。

▼打ち手
そこで、まず運用方針を見直し、告知だけでなく、ユーザーが反応しやすい投稿を増やしました。具体的には、キャラクターを用いた日常の小ネタやアレンジ紹介、開発担当者のこだわりなどを投稿に組み込み、購入者の声に反応することです。また、キャンペーン投稿だけでなく、日常投稿でも質問形式や選択肢を入れ、ユーザーが気軽に反応できる機会をつくりました。

▼結果
その結果、通常投稿でもコメントが増え、商品についての会話が生まれるようになりました。キャンペーン時だけ反応が増えるアカウントから、日常的にユーザーとの接点を持てるアカウントへと変化したのです。

この事例で重要なのは、Xを単なる告知板として使うのではなく、ユーザーとの会話の入口として設計したことです。EC事業者にとって、Xの反応は顧客理解にもつながります。どの表現に反応があるのか。どんな使い方が興味を持たれるのか。ユーザーがどのような文脈で商品を語っているのか。こうした情報を拾うことで、投稿改善だけでなく、商品ページや広告、キャンペーン設計にも活かすことができます。

インプゾンビに負けない、本質的なX運用

近年のXでは、インプレッションを稼ぐことを目的にした投稿や、話題に便乗するだけのアカウントも目立つようになりました。いわゆる「インプゾンビ」と呼ばれるような存在により、ユーザーが情報の質に敏感になっている面もあります。

このような環境で、企業アカウントが安易にインプレッションだけを追いかけると、ブランドの信頼を損なう可能性があります。もちろん、見られることは重要です。どれだけ良い商品や投稿でも、届かなければ意味がありません。しかし、EC事業者が本当に見るべきなのは、インプレッションの先にある行動です。

たとえば、プロフィールを見に来たのか、商品ページに遷移したのか、キャンペーンに参加したのか、コメントや引用でどのような反応があったのか、再購入やファン化につながりそうな接点が生まれたのかなどが挙げられます。

インプレッションは入口であり、目的ではありません。

X運用で大切なのは、短期的な数字を追いすぎず、ブランドとして蓄積される文脈を大切にすることです。一貫した言葉遣い、商品や顧客への誠実な姿勢、ユーザーとの適切な距離感、トレンドに合わせた反応の速さ、炎上しやすいテーマへの慎重な判断。これらを積み重ねることで、Xは単なる拡散媒体ではなく、ブランドの信頼を育てる場所になります。

テキストだからこそ伝わる、企業の思想と熱量

Instagramでは、写真や動画を通じてブランドの世界観を伝えることができます。一方で、Xでは言葉そのものがブランドの印象をつくります。

どのような言葉で商品を紹介するのか、ユーザーからの声にどう反応するのか、トラブルや在庫切れ、配送遅延などが発生したときにどう伝えるのか、キャンペーンをどのくらいの温度感で案内するのか。こうした一つひとつの言葉が、企業の思想や姿勢として受け取られます。特にECでは、ユーザーが企業の担当者と直接会う機会は多くありません。だからこそ、SNS上の言葉がブランド体験の一部になります。

たとえば、購入者の投稿に対して丁寧にお礼を伝える、商品に関する質問に分かりやすく答える、開発の裏側を飾りすぎずに発信する、担当者のちょっとした気づきを投稿する。こうした発信は、派手にバズらなくても、ブランドへの信頼や親しみを生みます。

Xは、企業の“中の人感”を出せばよい場所ではありません。大切なのは、自社らしい人格を言葉で表現することです。カジュアルな言葉が合うブランドもあれば、落ち着いた丁寧な言葉が合うブランドもあります。ユーモアが強みになる企業もあれば、誠実さや専門性が信頼につながる企業もあります。自社の顧客にとって、どのような言葉が自然で、信頼できるのか。それを考えることが、X運用の土台になります。

X運用を始める前に確認したい5つのこと

X運用を改善する際、投稿数を増やしたり、キャンペーンを実施したりする前に、まずは現在のアカウントを次の5つの視点で見直すことが有効です。

●1つ目は、アカウントの役割や発信テーマが明確かどうかです。情報発信、ファンとの交流、問い合わせ対応、企業イメージ向上、キャンペーン活用など、Xで何を達成したいのかを整理します。

●2つ目は、ユーザーが反応したくなる投稿になっているかです。Xでは、一方的な告知よりも、「共感できる」「意見を言いたくなる」「誰かに教えたくなる」投稿が反応につながりやすくなります。

●3つ目は、リアルタイム性を活かせているかです。Xは速報性の高いプラットフォームです。季節の話題、トレンド、ニュース、イベント、天候、記念日など、その瞬間に関心が集まっているテーマと自社の商品・ブランドを自然につなげられるかが重要です。

●4つ目は、リプライや引用投稿など、コミュニケーションを活用できているかです。Xでは、投稿後のユーザーとのやり取りもアカウント価値につながります。コメントへの返信、購入報告へのお礼、ユーザーの声の紹介、引用投稿への反応など、発信だけでなく会話を生み出せているかを確認します。

●5つ目は、企業らしさ・中の人の人格が伝わっているかです。Xでは、企業アカウントであっても「誰が発信しているのか」を感じられる投稿が親近感につながります。文章のトーン、投稿スタイル、ユーザーとの距離感、返信の温度感など、アカウント全体で一貫したキャラクターがあるかを見直します。

Xは、一度バズらせるためだけの場所ではありません。企業の考え方や商品への熱量を、日々の言葉と会話で積み重ねていく場所として活用することが重要です。

まとめ:Xは企業の「想い」と「熱量」が伝わる場所

X運用は、すべてのEC事業者にとって万能な施策ではありません。

商材や業種、運用体制によって向き不向きがあります。拡散力がある一方で、更新頻度や言葉選び、炎上リスクへの配慮も必要です。しかし、うまく活用できれば、XはEC事業者にとって非常に強い顧客接点になります。重要なのは、インプレッションだけを追うことではありません。自社の顧客にとって価値のある情報を届け、会話のきっかけをつくり、信頼を積み重ねていくことです。

Xは、バズを狙う場所である前に、企業の色が見える場所です。だからこそ、EC事業者は「Xをやるべきか」だけでなく、「Xでどのような企業として見られたいか」を考える必要があります。

次回は、連載の最終回として、2026年以降に勝ち残るためのSNS運用について解説します。InstagramやXを単体で見るのではなく、認知から購買、再購入、ファン化までを線で捉え、SNS運用を企業の投資としてどう設計していくべきかを整理します。


Instagramアカウント診断中
自社のInstagram運用が、EC事業の購買導線に合った設計になっているかを確認したい方は、無料のアカウント診断をご活用ください。投稿内容、リール活用、ストーリーズ導線、改善余地を整理するきっかけとしてご利用いただけます。

https://to-inc.co.jp/to_genba_lp2/assessment/


著者

小川 帆奈美

小川 帆奈美

株式会社to デジタルマーケティング事業部 プランナー。大学卒業後、商社でMDを経験。その後、モノやコトの魅力を伝えることに興味を持ち、ライターとして活動を開始。記事制作に加え、動画編集やSNS投稿制作などの業務領域も担当。その経験を活かし、2025年に株式会社toにジョイン。現在はプランナーとしてコンテンツ制作だけではなく戦略部分も含めた企業のソーシャルマーケティング支援を担当。


【Instagramアカウント診断中】
自社のInstagram運用が、EC事業の購買導線に合った設計になっているかを確認したい方は、無料のアカウント診断をご活用ください。投稿内容、リール活用、ストーリーズ導線、改善余地を整理するきっかけとしてご利用いただけます
https://to-inc.co.jp/to_genba_lp2/assessment/