千趣会が代表取締役の交代と業績予想の下方修正などに関する内容を公表

ECのミカタ編集部

株式会社千趣会(以下「千趣会」)は、「中期経営計画の見直し、希望退職者の募集、業績予想の修正及び配当予想の修正(無配)に関するお知らせ」を公表した。同社は、最近の業績動向を踏まえ、更なる抜本的な事業構造改革が必要と判断し、平成 29 年 10 月 27 日に公表した中期経営計画の内容について見直しを行った。

これに関連して、平成30年10月26日開催の取締役会において、希望退職者の募集を行うことを決議した。また、これらの状況を踏まえ、平成30年7月26日に公表した平成 30 年 12 月期の業績予想及び配当予想を修正している。

中期経営計画の見直し

同社は、中期経営計画の見直しについて次のように取りまとめている。千趣会グループは、1955 年の設立から一貫して、女性の一生を通じ、就職や結婚、出産などさまざまなライフステージに寄り添ったビジネスを展開してきた。通信販売事業については、ベルメゾンを中心とした総合カタログ販売が着実にユーザーからの支持を集め、これにより 30-40 代の女性を中心とした顧客基盤が確立され、この結果、当社の主力事業として長きに亘り安定的な収益基盤として貢献してきた。

また、ブライダル事業については、2008 年の株式会社ディアーズ・ブレインの子会社化以降事業拡大に努め、現在では安定した収益基盤を確立するとともに、当社グループにおける今後の成長ドライバーとして期待を寄せるところとなっている。

しかしながら、消費の急速な EC へのシフトや、新たなビジネスモデルを構築した企業の参入による競争激化、これらの外部環境の変化に加えて、当社自身が売上規模を重視したことによる通信販売事業の利益率低下及びオペレーションコストの増加等の影響により、近年、当社の業績は大幅に悪化しているとしている。また、この状況を打開するため、総合通販から専門店化へのシフトを進めているものの、複雑化した事業構造が足枷となり進捗に遅れが生じているとしている。

このため、同社として、通信販売事業における早期の業績回復及び安定化を実現するためには更なる抜本的な事業構造改革が必要と判断し、平成 29 年 10 月 27 日に公表した中期経営計画(以下、「前中期経営計画」という。)の内容を見直すことにしたのだ。

代表取締役の交代を含む前中期経営計画からの変更点

同社グループ全体及び各事業の戦略については、前中期経営計画から大きな変更は無いとしたうえで、ベルメゾンの強みである「オリジナル商品の企画力」、「ブランドの信頼性」及び「カタログの編集力・提案力」を活かしたビジネスモデルを再構築するため、引き続き、通信販売事業におけるターゲット顧客、品揃え、販売戦略・施策の明確化を推進するとともに、当社グループにおける事業間の連携を強化しシナジーの創出を目指すとしている。

一方で、足元の業績において、同社グループの最重要課題は通信販売事業の業績改善であるため、通信販売事業の収益悪化に歯止めをかけることを目的とした以下の抜本的な改善施策を集中的に実効する方針だ。

①事業規模の適正化

過度な EC シフトにより大幅に増加した商品型数を削減することにより、従業員の業務量を削減し、在庫・商品損益の管理機能を改善する。

ベルメゾン事業の在庫水準の適正化に向け、平成 30 年 12 月期中にセール販売等により在庫を縮減する。

②オペレーション改革

生産リードタイムの短縮とモニター調査の効果的な実施により、商品発注予測の精度を向上させ、正価販売割合の向上及び余剰在
庫の抑制を図る。

仕入先との協業を進め、粗利率の改善を目指す。

③カタログ起点での集客モデル再構築

カタログ起点でのアナログ・デジタル連携型集客モデルの構築を図る。

媒体計画・配布方法を見直し、より効率的な顧客提案を行う。

デジタルマーケ・Web 接客を進化させ、接客品質の向上を図る。

国内外 EC モール出店拡大、BtoB 拡大等、販路拡大を行うことで、売上増とブランド認知度アップを目指す。

定期販売のあり方を見直し、新たな顧客接点・サービスの構築
を実現する。

④組織・人員体制の見直し

代表取締役社長の交代、取締役の人数削減により経営体制を刷新するとともに、取締役及び執行役員の報酬を平成 30年11月より減額する組織の統廃合により組織全体をスリム化することで、意思決定の迅速化及び業務効率の向上を目指す。

ベルメゾン事業におけるターゲットとする顧客セグメントを明確に再設定し、領域ごとに最適な組織に再編を行う。

お客様の声活用、商品生産(製造)の効率化をより一層強化するため、専門部門を新設する。

希望退職による人員削減を実施し、固定費を削減する。

⑤コスト削減・資産処分

大阪本社を売却し、これまで分散していた各部門及びグループ会社の拠点を新本社に集約することにより、資産効率及び業務効率の向上を図る

在庫削減を行うことで、物量減及び自社倉庫への集約による賃借料の削減を進める。

マーケティング費用の効果検証及び予実管理の厳格化を進める。

⑥グループ会社の再編

同社グループにおける経営資源の有効活用及び経営効率の向上を図るため、以下の合併を行う。

連結子会社である千趣会ゼネラルサービス株式会社及び株式会社千趣ビジネスサービスの2社の吸収合併

連結子会社である千趣会コールセンター株式会社と千趣会サービス・販売株式会社の合併

事業の採算性及び成長可能性並びに当社事業との親和性を勘案し、連結子会社である株式会社フィールライフを解散及び清算する。

業績予想の下方修正

業績予想の下方修正

同社は、修正の理由として次のように述べている。通信販売事業においては、前中期経営計画に基づき総合通販型から専門店集積型へのビジネスモデル転換に
むけての体制変革、そのための販売チャネル戦略・販促施策の見直し及び MD(マーチャンダイジング)改革等を進めてきた。

しかし、EC 販促施策の不振による集客減少等の影響により上期売上高は減少したため、平成30年7月26日に業績予想の修正を行いました。当該修正においては、下期における改革の推進を見込んでいたが、第3四半期においても複雑化した事業構造が足枷となり進捗に遅れが生じ、業績予想数値の達成が困難な状況となった。

このため、通信販売事業における早期の業績回復及び安定化を実現するためには更なる抜本的な事業構造改革が必要と判断し、中期経営計画の見直しを行い、抜本的な改善施策を検討した。

第4四半期においては、見直し後の計画に基づき効率的かつ効果的なカタログ配布等の改善施策を着実に実行していくことで売上高の回復を目指すが、前回予想水準を確保することは難しいため、再度業績予想を修正する。通期の売上高については、前回予想より65億円下回り1,125億円となる見通しとのことだ。

カタログ通販の老舗として絶大な知名度を誇る千趣会。市場全体のEC化の前に、同社もECへ大きく舵を切っていたが、現状をみるかぎり大きな試練に見舞われていると言える。代表取締役の交代や希望退職者の募集を含めた大規模な刷新を通して、同社がどのように新たな存在感を発揮していくのか、その行く末を見守りたい。


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