生鮮食品ECのニーズはコロナでどう変化したのか。

ECのミカタ編集部

視聴行動分析サービスを提供するニールセン デジタル株式会社(東京都港区、代表取締役社長 宮本淳)は、消費者のマルチスクリーンの利用動向調査「ニールセン デジタル・コンシューマー・データベース2020 (Nielsen Digital Consumer Database 2020)」をもとに、生鮮食品のオンライン購入についての分析結果を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見ていく。

コロナ禍で生鮮食品のオンライン購入が増加

コロナ禍で生鮮食品のオンライン購入が増加

同社は、昨年の4月以降、緊急事態宣言による店舗の営業時間の短縮や、対面での接触への懸念などにより、実店舗での購入がこれまでのように頻繁にできなくなっている一方、在宅生活が推奨されている中、家での食事など生鮮食品の消費ニーズは依然として高く、オンラインという購入手段を選択するようになっていると考えられるとしている。

実際に2020年のデジタル・コンシューマー・データベースによると、2020年4月以降、初めてオンラインで生鮮食品を購入した、または購入頻度が増えたと答えた人が、生鮮食品をオンラインで購入したことがある人全体の28%を占めており、全カテゴリーの中で最も高い割合だった。またそのなかで、新型コロナウイルスの影響が終息した後も引き続きオンラインで購入したいと答えた人は50%弱いた。

生鮮食品のオンライン購入者に応じたラインアップの最適化が必要

生鮮食品のオンライン購入者に応じたラインアップの最適化が必要

生鮮食品は、ファッションや化粧品、書籍などのようにすでにオンラインで購入したことがある人が多いカテゴリーと比べて、まだ利用者数が少なく鮮度などを手にとって確認してから買いたい人が多くみられ、それらの消費者にとっては新しい購買方法へのチャレンジともなる。

そのため、そうした新しいチャレンジへの抵抗感が少ない若年層や、自由に外出して店舗で買うことが難しい消費者が、率先してオンラインから生鮮食品を購入する顧客層になると考えられるとしている。実際に、属性ごとにオンラインで初めて生鮮食品を購入した、または購入頻度が増えたという人の割合を見たところ、年代別では49歳以下の若年層が31%で、世帯構成では子育て中の消費者である「子供と同居している二世代世帯」で37%、そして「一人暮らし」では30%、と他の属性よりも高い割合になっていた。

デジタルリテラシーの高い若年層は、オンラインでの買い物に以前から慣れている傾向があり、オフラインでの行動に制限や不便が出てきた場合、自然にオンラインで解決策を求めると考察。子育て中の消費者は、コロナ禍の前のように子供を連れて外出することが難しくなっているため、オンラインで購入するようになったことが推測できるとしている。

ターゲットのニーズの変化をとらえる

同社アナリストのマ・ピンチュアン氏は、次のように述べている。

「生鮮食品を取り扱っているオンラインショッピング・サイトの運営会社にとって、生鮮食品はまだ新しいカテゴリーのため、参入している競合他社がファッションや化粧品などのカテゴリーほど多くはありません。そのため、この新しい購買行動が形成されている段階の今が、売り上げを拡大しマーケットシェアを獲得する良いタイミングと考えられます。成功のための一つの施策として、例えば、若年層もしくは一人暮らしの消費者にはカット野菜の小分けパッケージや、下ごしらえ済み食材と調味料がセットとなっている時短ミールキット、子育ての家族には子供用の栄養食材といった、ターゲットのニーズにあった生鮮食品のラインアップを増やすことも考えられます。2021年1月の現在、いつ新型コロナウイルスが収束するのかが明らかではない環境の中、昨年利用が拡大してきた新しい購買行動の持続性を見極め、早期にターゲット層とそのニーズを正確に把握し、それに対応していくことが重要でしょう」

2020年以来、新型コロナウイルスの流行により日本においてもデジタル利用がより加速している。オフラインでは従来ほど自由に行動できなくなっていることから、エンターテインメントからコミュニケーション、教育、食事、ショッピングまで、コロナ禍の影響により生活のあらゆる面で、より多くの消費者が「オンライン」を一つの手段として選択するようになった。

生鮮食品のオンライン購入はその中の注目すべき一例だ。生鮮食品をオンラインで購入するのは、鮮度を手にとって確認してから購入することが当たり前だった消費者にとって抵抗を感じることもあるかもしれない。しかし、2021年1月現在、首都圏をはじめとして2回目の緊急事態宣言が発令中であり、しばらくは店舗で接触する機会を減らしたいという心理も働いているようだ。

そのような中、オンラインで生鮮食品を買うという新しい購入方法が、多くの消費者の生活に浸透していく可能性があると考えられそうだ。またオンラインが、ニーズに適した新しい購入の選択肢であれば、消費者は今後も継続して利用する意向が高いことも見てとれる。このような状況下においてオンラインの領域でショッピングサイトの運営会社がシェアを拡大するためには、ニューノーマルのオンライン消費者のニーズを正確に理解し、ニーズに応じた出品やラインアップの最適化を行っていくことが重要となりそうだ。

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