店舗とECの顧客情報を統合したDCMグループが目指す“顧客データを活用したお店づくり”とは?

ECのミカタ編集部 [PR]

(写真右から)
DCMホールディングス株式会社
システム開発部 シニアマネジャー 小竹 理 氏
経営企画室 シニアマネジャー 八並 朋之 氏
日本電気株式会社
デジタルビジネス基盤本部 主任 加治屋 紘子 氏
リテール・サービス業システム本部 プロジェクトマネージャー 岡村勝仁 氏
リテール・サービス業システム本部 プロジェクトマネージャー 川浦 崇明 氏

全国673カ所にホームセンターを展開するDCMホールディングスは2019年6月、グループ企業を横断した共通会員サービス「マイボ」を開始するとともに、実店舗とECサイトの顧客データベースを統合した。来店履歴や購買データなどを分析し、実店舗での接客やECサイトの商品提案などに生かしている。今後はグループ全体でCRMを強化し、LTV(顧客生涯価値)を高めていくという。

「マイボ」のシステム基盤として、NECが提供するEC・通販統合ソリューション「NeoSarf/DM」を導入。複数のグループ会社が運営する実店舗とECサイトの顧客を統合するという難しい開発案件を、約10カ月で完成させた。

DCMホールディングスが顧客データベースを統合した背景や開発の経緯、「マイボ」を軸としたCRM戦略、そして同社が目指す小売りの将来像などについて、DCMホールディングスの八並朋之氏と小竹理氏、日本電気(NEC)の川浦崇明氏と岡村勝仁氏、加治屋紘子氏に話を聞いた。

顧客データの取集とデータベース統合はマーケティングに不可欠

DCMホールディングスは傘下に「DCMカーマ」「DCMダイキ」「DCMホーマック」「DCMサンワ」「DCMくろがねや」といった事業会社を持ち、グループ全体で673店舗(2019年8月末時点)を展開している。

以前は事業会社ごとに会員サービスを実施しており、顧客データを一元管理していなかった。そのため、グループ全体でマーケティングやCRMの施策を打ちたくても、必要な顧客データを収集することが出来なかったという。

その結果、グループ全体で年間売上高約4500億円を誇り、膨大な顧客情報を抱えているにも関わらず、店舗運営や販売促進などにおいて十分なシナジーを生み出せていなかった。

「以前は、どの顧客が、どこの店で何を買ったのかを把握できませんでした。マーケティングやCRMを強化するには、グループを横断した顧客データベースが不可欠だと判断し、その収集手段として共通会員サービス『マイボ』を導入しました」(DCMホールディングス・八並朋之氏)

DCMホールディングス株式会社
経営企画室 シニアマネジャー 八並 朋之 氏
システム開発部 シニアマネジャー 小竹 理 氏

DCMホールディングスは複数のホームセンター運営会社が2006年に経営統合して誕生した。「マイボ」を導入し、グループの会員サービスを共通化したことで、顧客とのエンゲージメント強化を図っていくという。

「弊社は経営統合から10年以上かけて、各社のバックオフィス業務の統合を進めてきました。『マイボ』を通じて会員サービスを統合したことで、グループ全体のCRMを強化し、顧客満足度をさらに高めていける体制が整いました」(DCMホールディングス・小竹理氏)

グループを横断した共通会員サービス「マイボ」を2019年6月1日に開始した。プラスチックカードの会員証とスマホ会員証がある。

■割賦販売法の改正でクレジットカード情報を保持できず

会員サービス「マイボ」を作った背景には、割賦販売法の改正に伴い、顧客のクレジットカード情報を各店舗で保持できなくなったこともある。

DCMグループの一部の事業会社は、クレジットカード情報を使って会員IDを管理していた。こうしたレギュレーションが割賦販売法の改正によって継続できなくなることを見据え、会員サービスのリリースに踏み切った。

「マイボ」のリリースまで10カ月、NECの「NeoSarf/DM」だけが開発条件をクリア

「マイボ」は2019年6月1日にスタートした。会員数は2019年9月末時点で約340万人に増えている。

DCMホールディングスが「マイボ」を開発するために、ベンダーを募集したのは2018年7月下旬のこと。リリースまでの猶予は約10カ月間だった。

数社の開発ベンダー大手に提案依頼書(RFP)を提示したところ、パッケージシステムを使った開発や、フルスクラッチでの開発など、いくつかの提案があったという。ただ、開発期間10カ月という条件や予算規模、そして、複数の事業会社が運営する600店舗以上の実店舗とECの顧客データを統合する開発の難しさから、DCMホールディングスが提示した条件をクリアできたのはNECだけだったという。

特に、買い物をしたときに即座にポイントを付与する仕組みや、会員ステージがリアルタイムで変動する仕組みは難易度が高く、「ほとんどのベンダーから、開発期間または開発スコープの変更を求められました。」(DCMホールディングス・八並朋之氏)。

「NECさんは、弊社がやりたいことを最もよく理解してくれた」

NECはEC・通販統合ソリューション「NeoSarf/DM」と「ユーザデータ活用基盤サービス」を組み合わせて「マイボ」を開発した。

「NeoSarf/DM」はECのフロント、販売管理、バックオフィスといった業務範囲ごとに、機能単位のコンポーネントを組み合わせてシステムを構築する。これにより、企業ごとに開発の自由度が高く、かつ迅速にシステム開発を行えるのが特徴だ。

「『NeoSarf/DM』は、パッケージシステムとフルスクラッチの“良いとこ取り”ができるシステムです。お客さまごとに機能の付け足しも柔軟に行えますので、将来、機能を追加したい場合も柔軟に対応できます」(NEC・川浦崇明氏)

DCMホールディングスが特に重視したシステム要件は、「リアルタイムのポイント付与」や「リアルタイムでの会員ステージの変更」を実現することだった。NECは「NeoSarf/DM」をベースに、こうした要望を叶えた。

「複数の事業会社にまたがって600店舗以上を展開している上、リアルタイムでポイントの付与や会員ステージの変更を行えるようにするには、高度なノウハウが必要でした。『NeoSarf/DM』はもともとECサイト向けの製品として開発されていますので、リアルタイムでのポイント付与や会員ステージ管理に対応できました」(NEC・岡村勝仁氏)

日本電気株式会社
リテール・サービス業システム本部 プロジェクトマネージャー 川浦 崇明 氏
リテール・サービス業システム本部 プロジェクトマネージャー 岡村 勝仁 氏

複数の開発ベンダーの中からNECを選んだ理由について、DCMホールディングス・八並朋之氏は次のように説明した。

「弊社が実現したいことをもっとも良く理解し、開発計画を提案してくださったのがNECさんでした。特に、EC・通販統合ソリューションNeoSarf/DMは、オフラインとオンラインの両方に対応し、「ユーザデータ活用基盤サービス」は複数のオンラインサイトからの認証機能の統合に対応していました。認証機能の統合により、グループ間のサービス連携を実現し、エンドユーザー様の利便性を向上し、グループ企業の経済圏の拡大を実現します。『NeoSarf/DM』と『ユーザデータ活用基盤サービス』を組み合わせることで、弊社が希望する仕組みを実現できると説明していただいたことが、NECさんとの契約を決めた最大の理由です」(DCMホールディングス・八並朋之氏)

NECが提供するEC・通販統合ソリューション「NeoSarf/DM」

2社が協力して開発プロジェクトを推進

実店舗とECサイトの会員データを統合するためのシステム開発に、1年以上かかるケースは珍しくない。DCMホールディングスはNECとタッグを組み、「NeoSarf/DM」を活用することで、わずか10カ月で成し遂げた。

「マイボ」を10カ月間で開発できた背景には、DCMホールディングスとNECの協力体制も欠かせなかった。

NEC側の窓口だった加治屋紘子氏は、開発中のやり取りについて次のように振り返る。

「DCMホールディングスの八並さんと小竹さんは、要件定義などの際に、やることとやらないことを素早く決定してくださいました。こうした開発プロジェクトでは、社内調整が難航することも珍しくありません。しかし、お二人が強いリーダーシップでプロジェクトをまとめてくださったため、スムーズに開発が進みました」

日本電気株式会社 サービス・テクノロジー本部 加治屋 紘子 氏

データを店舗づくりに活用へ。クリック&コレクトなど新サービスも検討

DCMホールディングスは今後、「マイボ」を軸に集めた顧客データを、どのように活用していくのだろうか。

八並氏は「データを具体的にどう活用するのかは、これからの課題」としながらも、データ活用の展望を次のように語ってくれた。

「将来的には、顧客の属性データや購買データを商品開発や売り場づくりに生かしていきたいです。また、購買データを分析することで、お客さまにとって本当に有益な商品の情報をECサイトなどでレコメンドしたいと考えています」

また、将来的な可能性の1つとして、販売データを踏まえて売り場をローカライズすることや、会員情報を活用した地域密着型の生活支援サービスを手掛けるなど、さまざまな活用方法が想定されるという。

■ポイント制度を外部にも提供

DCMホールディングスは「マイボ」を外部の企業にも提供している。「マイボ」経済圏を拡大し、ユーザーにとって、より便利なサービスへと進化させたいという。

「将来的には、地域の小売店や飲食店などと協業し、お客さまがより便利にポイントを使えるようにしていきたいです。他社へのサービスの拡張も、今後の開発案件として計画しています。この辺りもNECさんにご協力いただきたいですね」(DCMホールディングス・八並朋之氏)

実店舗とECが連携してサービス強化、競合と差別化へ

DCMホールディングスのEC売上高は非公開だが、2019年3-8月期(2020年2月期 中間期)におけるEC事業の成長率は前年同期比38.1%増だった。「会社全体の売上高から見ると、EC事業はまだ小さい」(DCMホールディングス・八並朋之氏)としながらも、ECが急成長していることは間違いない。

今後は実店舗とECサイトをシームレスにつなぎ、競合他社の差別化を図っていきたいという。例えば、ネットで商品を予約して店頭で受け取る「クリック&コレクト」などを検討している。

DCMホールディングスは今後、実店舗とECサイトを融合し、データを活用した売り場づくりや商品開発を進めていく。その際、「マイボ」は実店舗とECをつなぐハブになる。小売業界でデジタルシフトが加速するなか、DCMホールディングスとNECが手掛ける「マイボ」の今後に注目だ。

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