「AIによる購買」2030年までにEC市場の約4分の1を占める可能性 KEARNEY調査
A.T. カーニー株式会社(以下、KEARNEY)は2026年8月21日、論考「エージェンティック・ペイメント~デジタル・コマースの新たなフロンティア」を公開した。
AIによる購買がECの約4分の1を占める可能性
KEARNEYは「AIショッピング・エージェントが2030年までに、全ECの約4分の1を占め、年間オンライン売上で約10兆~12兆ドルを動かす可能性がある」と予測。
利用者が目標や制約を設定し、AIが購買プロセスを担うモデルが普及すれば、日常的に繰り返される買い物や、比較・調査に多くの時間を要する買い物において、利便性と効率性が高まる可能性がある。
消費者行動にも、AI活用の広がりを示す兆しが見られている。Vox Mediaによる2024年の調査では、Z世代の消費者の61%が、検索エンジンや小売サイトではなくAIツールを使って商品調査を始めている。
本論考で紹介されている別の調査では、Z世代の購買者の82%が、購買判断の指針としてAIツールを利用していることが明らかとなった。
2つの「取引シナリオ」で購買を再設計
エージェンティック・ペイメントでは消費者が予算、希望するブランド、配送時間帯などの条件を設定した後、AIエージェントが商品の発見、比較、交渉、検証、支払いまでを担う。
リスクや事前に設定したポリシーに応じて必要な場合のみ利用者へ確認を求め、即時購入、価格監視、商品の補充やサブスクリプション、返品・保証請求まで、一連の購買プロセスを支援することが想定されている。
取引の実行には、特定の商品やカートについて最終的な承認を利用者自身が行う「Human present」と、価格帯や商品カテゴリーなど事前に定めた範囲内でAIが自律的に行動する「Human not present」の2つの主要なシナリオが存在している。
KEARNEYはこの転換について「新たな顧客体験の創出にとどまりません。技術、オペレーティングモデル、広告・収益モデルの3つの領域に影響を及ぼし、利用者の意図、取引の認可、問題発生時の責任を誰が担うのかという、決済バリューチェーンそのものの再設計につながります」とコメントしている。

※画像参照:2030年までにAIショッピング・エージェントがeコマースの約4分の1を占める可能性を示唆(A.T. カーニー株式会社)
「権限・正確性・責任」の3課題への対応が必要
本論考では、エージェンティック・ペイメントのエコシステムに参加する企業が検討・解決すべき重要な課題として、以下の3点を挙げている。
◆エージェントが利用者に代わって支出する「権限」
◆利用者の意図に沿った商品を購入する「正確性」
◆問題が発生した際の「責任」の所在
エージェントの侵害や設定不備、利用者の意図の誤解釈、ハルシネーション、チャージバック発生時の責任範囲の曖昧化など、従来の決済とは異なるリスクへの備えが必要となる。
KEARNEYはこうした状況に対する対応策として「署名付きで取消可能な委任設定、利用範囲を限定した支払いトークン、一定条件を超えた場合に人による確認を求めるHuman-in-the-loopの閾値、利用者の意図や制約を構造化して確認する仕組み、紛争対応に利用できる証跡、関係者間の共有責任モデルなどが挙げられます」とコメント。
さらに、安全性、説明責任、追跡可能性を確保するためには、取引前の本人確認と委任設定、取引中の認証・リスク判定、取引後の監査ログと責任配分を一貫してつなぐ、正式な「トラスト・スタック」の構築が重要であると続けた。
AIショッピング・エージェントへの対応を検討する上で、今後の施策の参考にしたい。


