リアルなツイートが世の中を動かす。マスメディアでなくてもヒットが生まれるTwitterの真相

石郷“145”マナブ

Twitter Japan株式会社 森田謙太郎氏

有名人ではなく、身近に存在する誰かのTwitterのツイートがキッカケとなり、モノが売れていきます。
一人一人の声で消費が動く時代において、例えばTwitterでは何を意識すれば潜在的なお客さんが商品に関心を持ちヒットの足がかりを掴める様になるのでしょうか?
今を知るべくTwitter Japan株式会社の森田謙太郎氏に話を聞いてみました。

Twitterのツイートはなぜ人々を商品購入に向かわせるのか?

Twitterは以前であれば発信しないと価値がないと思われていましたが、今は違って〝今を知るためのツール〟です。かつてならその役目はテレビだったのですが、外にいてテレビを見られない状態の時や隙間の時間でもそれが得られるという点でTwitterは使いやすく、利用される方が非常に増えています。

一情報として発信される情報の中には、テレビや新聞、雑誌で発信される芸能人のニュースもありますが、「街で見かけた変わった写真」や「猫が面白い動きをした」等の些細なネタや、「購入したもの」「食べたもの」の紹介というように、ありとあらゆるもので多岐に渡ります。また、写真つきのツイートで言えば画像修正ソフトで修正されていない、消費者の手元にあるまさに実物の写真という具合に、どれも利用者にとってはリアリティを持って受け止められているのが特徴です。

そうした要素がプラスに働き、大きな拡散を生んでいるのが現状です。
昨夏の話なのですが「印鑑はんこSHOPハンコズ」というECサイトが運営する公式Twitterアカウント「ねこずかん」で3万2000を越えるリツイートがあり、その話題性も手伝って、同サイトの商品「366日の花ずかん」はわずか10日間で2000本を超える受注がありました。

では、どういうツイートをしたら良いのでしょうか?私は約7000人の方にお聴きいただいたTwitterのビジネスセミナーの講師として全国に伺っていますが、みなさんが仰るのは「面白いツイートを考えているけどなかなかそのアイデアが浮かばない」という事です。

まず私はPRの目線が大事だという話をします。例えばTVに取材してもらいたい料亭があったとしても、普通の料亭ではなかなか取り上げられません。そこでこうしてみたらどうでしょう?「料亭の料理があったとして、これは普通なら複数人で行って初めて食べられるものだけどたった1人で行っても食べる事ができる」。常識が覆っているといった要素があるからテレビに取材されやすくなり、結果〝バズる〟ということになります。

「366日の花ずかん」はなぜTwitterで人の心を掴めたのか?

「366日の花ずかん」はなぜTwitterで人の心を掴めたのか?

「366日の花ずかん」という商品は、こういったPR目線に工夫があったのです。花をテーマにした366日一日ごとのバースデーシンボル「366日の花個紋」を使い一日ごとに異なるモチーフに、その人の名前をかさねたユニークなハンコで、世界に一つだけのハンコだとアピールしました。すると、一般の人に「センスが良い」、「銀行印にできるのかな」などとリツイートされて、瞬く間に大きな規模の拡散が生まれました。企画のユニークさや面白さに反応した一般の方の力によってなされた事です。

注目すべきは、ツイッターで投稿された情報は様々な人たちの本音であり、売ろうとして情報を出しているのではなくて、あくまでその人の一次情報として発信しているのを有効活用しているという事なのです。これこそがPRの目線だと思っています。

何かを買ってその感想をツイートする、というモチベーションは、良いものであれば「みんなに知らせてあげたい」「知ってもらって自分と同じようによい体験をする人が増えたらいいな」というように、人として良い行いをしたというプラスの満足感が裏にはあります。商品やサービスのことが「良かった」「おいしかった」という具合に感想と一緒にツイートされるので、それは一般的なバナー広告での表現とは全く異なります。第三者的な文脈が入るという意味で、普段ウェブサイト上で見かけるレビューよりもTwitter上の感想の方がリアルに映ります。

Twitterはコミュニケーションの一つと捉える

もう一つ、よく頂くご質問で思うことがあります。「どうやったらフォロワーさんが増えるのですか」という方ほど、抜け落ちがちなポイントが〝会話〟です。「自分たちのツイートにコメントをもらったときに何か反応しているか」「フォローしてもらったときに何かしているか」という事です。
必ず全てのコメントに返事をしたりフォローを返す、ということでなくても良いのです。もらったコメントに「いいね」を押すだけでも〝会話〟のひとつなのです(当然、ほめてもらったら、ありがとうございますと伝えることがベストです)。 面白いツイートを考えることも大事ですが、そのツイートはあくまで会話を始めるための手段であって、目的はそれらをきっかけにより深く繋がるコミュニティを形成するという原点に立ち返る事がもっと大切なのです。

こういう事をするのは面倒だ、と思われる方も多いのではないかと思います。ただよほど規模が大きく、多くの商品を扱う企業でない限り、ツイートで発信するための新しく面白いトピックが数多く存在しているわけではありません。新しく面白いトピックを一から生み出すことと比べてみれば、返事や会話をすることは既に相手が話題を持ちかけてきてくれている分、簡単だという考え方もできます。しかもそれをやることによって相手がこちらの思う以上に心を寄せてくれたり、フォローしてくれれば、こんなに嬉しいことはないですよね。

ツイートにユーザーがコメントしてくれたときに、返事をしている企業やお店は現状かなり少ないです。だからこそ、企業やお店とユーザーの会話が実現すれば受け手にとっては嬉しい印象となり、心理的距離感が縮まる可能性を秘めています。この距離感がそのユーザーにとって他のお店と比べたときの「別格の扱い」をもたらすわけです。

Twitterはお店そのもののレビューも形成する

Twitterはお店そのもののレビューも形成する

Twitterはお店が扱っている商品に対してのみならず、お店そのものに対するレビューとしての要素も兼ね備えていると考えていいでしょう。というのもTwitterを見れば「フォロワーが多く、しっかり会話がされていて好感が持てる」「お店にたいしての評価が高いからフォロワーさんが増え続けている」等レビューに相当する価値を見ることができます。

〝会話〟しているだけに見えますが、外からみたらそれはお店に対するプラス評価であるわけです。外からみたら「僕もその会話に入りたい」となる。さらには仲間に入れて欲しいから「僕も買っちゃおうかな」ということも起こりうる。フォロワーを増やすことをゴールにするのではなく、いかに〝会話〟ができるかが最初の目標です。その副産物としてフォロワーが増えるという考え方の方がうまくいくのではないかと思います。

Twitterを〝魔法のツール〟のように考えていらっしゃる方もいます。すぐにバズって大逆転ホームランを狙えるのではないか。しかしTwitterもウェブサイト等と同様で、コミュニケーションのためのプラットフォームの一つでしかなく、地道に取り組んで頂く必要があります。どのSNSが今後流行るかに着目する前に、 お客さんを魅了するだけの商品づくりや見せ方、そして会話があるはずなのです。ここがしっかり定まっていれば、どのプラットフォームを使っても効果が期待できます。先ほどのPR目線とつながる部分かと思います。

先ほどお話ししたように、お客さんとコミュニケーションをとって大事にしていくベースがある中で、「面白いでしょ」という提案そして話題のきっかけが提供され、お客さんは「わー!」と盛り上がり、その盛り上がりに反応することで会話が積み上がってくる。この繰り返しなのです。ぜひこの全体像をみながら運営のリソースについて考えてみて頂けたらと思います。

広告は成長速度を加速化させたい時に

セミナーでは広告に関してもよく質問を頂きます。「クイックプロモート」は通常のツイートを使って最少5000円から、スマホ上で設定ができ、結果もスマホで見る事ができます。自信があってぜひ広く伝えたい商品があったら、そのトピックをツイートで世に出したときに、拡散のキーパーソン、インフルエンサーのような人に気づいてもらうために、広告を使ってみてはいかがでしょうかというお話をしています。

また、最近では「オートプロモート」というサービスも始めました。毎日最初の10ツイートが自動的に広告に切り替わって、フォロワー以外の方にもみなさんのツイートが表示されるのです。月額固定で9900円いただき、初期設定を済ませれば、あとは普段通りツイートするだけで最適な広告配信が行われます。

お話ししたハンコ屋さんのツイートも、広告を併用しています。これは広告の力だけで全てのリーチを確保しようとしているのではなく、日々のツイートと相乗効果でPR的に広げていこうとしているのです。いきなりTwitterで広告を、と考えるより、まずはお客さんとの会話やコミュニケーションの土台として使って頂けたらと思っています。それさえ考えていけば、これからのお店にとってTwitterは必ずや大きな力になれると信じています。

編集部はこう考える。「お客様と向き合う好機。Twitterでどうコミュニティを作るか」

個の力は増しています。その個の力を最大化するには、Twitterでいうならそれぞれの店のブランディングを大事にしていく事だと思いました。商品づくりや仕入れの部分で自分たちがどうディレクションして、演出していくかというのが礎にあると思います。

それがあってのツイートであり、その中でファンを募っていく。それでいて、ファンからちゃんと自発的にアクションをおこしてもらう為には、そこで自分もアクションしていく必要もあって、コミュニティを作るようなものだという印象を持ちました。意思疎通ができてくれば「こういうことをやったら面白いのでは」などの発想も生まれ、それがPR目線にもつながり、その点を忘れずツイートすることで、自然に拡散されるというわけです。僕らとして感じたのはTwitterに怒られるかもしれませんが、広告ありきではないという事です。

だから思うのです。Twitterをきっかけに、地道にお店とお客様が向き合うことから始めてはいかがでしょうか。個々人の持つ潜在的パワーの可能性にかける第一歩はそこからなのではないかと思います。それがきっと新しい時代の風となります。

<ECのミカタ通信 2018 SPRING vol.15より抜粋>

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記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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