【2020年振り返り】物流ニュースまとめ〜消費者のニーズが多様化。2021年EC事業者に求められることとは〜

濱田祥太郎

2020年は冒頭から新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、テレワークの普及や外出の自粛などによってEC需要が急増した一年となった。その影響は物流業界にも及び、各企業によるさまざまな対応や施策が注目を浴びた。

今回はECのミカタ編集部が出稿した物流関連記事のうち、特にEC事業者に関わる重要なニュースを取り上げる。話題となったトピックを押さえ、来年の業務への参考としてほしい。

楽天「送料無料ライン」が決着

年明けから春先にかけて大きな話題となったのが、楽天の「送料無料ライン」だ。
楽天はこれまで送料を無料とする価格帯設定を各店舗に任せていたが、Amazonに追随するべく、2019年に「送料を無料とするラインを一律3,980円とする」と発表したことが発端となる。
ECのミカタ編集部でも、同施策に関する取り組みを取り上げた。

公取委、楽天に対する緊急停止命令の申立てを取下げ
楽天が『送料無料ライン』をついに導入 店舗側で導入の可否を選択可能に・導入店には期間限定で「メール便100円・宅配便250円(いずれも上限あり)」の配送料支援を実施

物流・WMS関連では資金調達続々

WMS(倉庫管理システム)とは、Warehouse Management Systemの略で、在庫情報や入出庫情報などを把握するためのシステムを指す。
EC事業では自社が取り扱う商品の数や受発注数が多くなるにつれて在庫管理が煩雑になる傾向があるため、WMSをどう活用していくかに注目が集まっている。2020年はこうしたWMSを展開する企業の資金調達が相次いだ年となった。

在庫管理SaaS「ロジクラ」は、倉庫でのピッキングや検品などをスマホ1台で効率化できる在庫管理ソフトだ。
1月、このソフトを開発・提供する株式会社ロジクラ(旧:株式会社ニューレボ)は、「ロジクラ」を核とした在庫データ活用事業『物流群戦略』によって過剰在庫問題の解決に対応する方針を表明。同時に、「ロジクラ」の販売拡大やシステム開発等を目的として、総額1.2億円の資金調達を実施したことを公表した。

ロジクラが新『物流群戦略』を公表 同時に1.2億円の資金調達も実施

10月には、物流フルフィルメントプラットフォームサービスを提供している株式会社オープンロジが、17.5億円の資金調達を実施した。
今回の調達資金は事業拡大のための人材採用やプロダクト開発に充当予定で、組織基盤の強化に取り組み、企業の枠を越えた物流資産・データを連携する「フィジカルインターネット」を推進するためとしている。

オープンロジ17.5億円のシリーズC資金を調達 テクノロジーとデータの活用で物流DXを加速する「フィジカルインターネット」を推進

11月には、株式会社ロジレスが、第三者割当増資により5億円の資金調達を実施したと発表した。同社が提供しているEC物流効率化SaaS「LOGILESS」はOMS(受注管理システム)と、WMS(倉庫管理システム)の一体型システムで、調達した資金は同システムの機能強化や自社の拡大・強化にあてるとしている。

EC物流効率化のロジレスが5億円の資金調達を実施

ヤマト運輸、急増するEC需要に対応

ヤマト運輸、急増するEC需要に対応

ヤマト運輸は「ヤマトクオリティ」と呼ばれるほど個配の評判が高く、昨今のEC需要の高まりを受けて、さまざまな取り組みやサービスの拡大を行っている。

3月には、Yahoo!をグループ会社とするZホールディングスと業務提携に向けた基本合意書を締結した。物流品質の大幅な改善とストアの負担軽減を目指したもので、ヤマト運輸が持つ企業パワーを活かし、ECに特化した機能追加を今後も行っていくという。今後は他の企業に対してもYahoo!同様の提携を行う可能性があるとしており、さまざまなサービスへの広がりが期待されている。

ヤフーがヤマトと提携し物流強化、Zホールディングスのさらなる取り組み

EAZYのロゴ

6月には、利便性向上と再配達軽減を目的として、EC向け新サービス「EASY(イージー)」を開始した。同サービスは受取手が玄関ドア前、ガスメーターBOX、車庫など、多様な非対面での受け取り方を選択でき、受け取る直前まで場所の変更が可能なことが特徴だ。対象は「ZOZOTOWN」や「Yahoo!ショッピング」「PayPayモール」の一部ストアとなっているが、今後どのような広がりを見せるかに注目が集まっている。

ヤマト運輸がEC向け新配送サービス『EAZY』申込受付の開始へ まずは「Yahoo!ショッピング・PayPayモール」出店ストアから

9月には、個人間取引サイト(フリマ・オークションサイト)などの事業者を対象に、ポスト投函サービス「ネコポス」の取り扱いサイズを、現行の厚さ2.5cm以内から3.0cm以内へと拡大することを発表した。新型コロナウイルスの影響で個人間取引が急増したことを受けての対応で、同社は、引き続きより安心で利便性の高いサービスの提供を目指すとしている。

ヤマト運輸『ネコポス』サイズを3.0cm以内に拡大へ

注目集めた佐川GL大規模物流センター開設

注目集めた佐川GL大規模物流センター開設

EC業界では中小規模事業者と大手事業者との物流優位性の格差が広がるばかりであったが、そうした状況を打開すべく誕生した、佐川グローバルロジスティクスの大規模物流センターが話題となった。

SGホールディングスグループが年初に竣工した次世代型大規模物流センター「Xフロンティア」内に開設されたのは、中小規模事業者に最新の物流システムを低コストで提供する物流プラットフォームセンターだ。ロボティクスの導入による省人化に加え、固定費を取らず変動費(実稼働ベースの費用)のみにしているため、小さな規模から利用できるとのこと。編集部が5月に取材した本記事は多くのPVを集め、注目の高さが伺えた。

佐川グローバルロジスティクスが次世代型大規模物流センター「 Xフロンティア」で中小EC通販事業者向けの新物流サービス提供開始!

倉庫関連では、株式会社流通サービスが、株式会社オルビス社の倉庫で自動搬送ロボットの稼働を開始したとのニュースも話題となった。新型コロナウイルスの影響でEC業界に注目が集まる中、省人によるコスト削減・労働負荷低減などの効果を目指す代表例となった。

流通サービス社が、オルビス物流施設に330台の搬送ロボを導入し、処理能力30%大幅増を実現

2021年は「置き配最適化」が求められる可能性

2020年は新型コロナウイルスの影響によるEC需要の高まりを受けて、物流業界ではWMSの資金調達やネコポスのサイズ変更などさまざまな施策が行われた。
一方で、受取手(消費者)のニーズも多様化しており、Amazonが夏頃本格化させた宅配ボックスやOKIPPAが普及するなど、「置き配」への需要の高まりが伺える。今後、EC事業者は「置き配規格」にあわせた商品開発をする必要が出てくるかもしれない。


著者

濱田祥太郎

千葉県我孫子市出身。新卒で全国紙の新聞記者に4年半従事。奈良県、佐賀県で事件や事故、行政やスポーツと幅広く取材。東京本社では宇宙探査や宇宙ビジネスを担当。その後出版社やITベンチャーを経てMIKATA株式会社に入社。ECのミカタでは行政、規制系・老舗企業のEC事例に興味があります。