Yahoo!ショッピングで進む「AI化計画」 ユーザー、出店者の変化とLINEヤフーが見据える「その先」とは

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湯浅 英夫

主要ECモールにおけるAI導入が加速するなか、LINE ヤフー株式会社も「Yahoo!ショッピング」においてユーザー向け・出店ストア向けの両面でAI機能の実装を進めている。ユーザー向けとしてはAIエージェント「Agent i」に次々と新たな機能を追加。出店事業者向けには、ストア運営をAIで支援するサービス「Yahoo! EC Pilot」を展開し、出店者側の利用も拡大しているという。

本稿では8月に開催された「『Yahoo!ショッピング』AIエージェントに関する説明会」での発表内容をもとに、同社が推進するAIエージェント活用の取り組みを探る。

ユーザー向けAIエージェントの利用拡大 新たな購買体験を提供

Yahoo!ショッピングにユーザー向けAIエージェントが導入されたのは2026年2月。チャット機能に始まり、「AIお買い物メモ」機能の実装など拡張を続けてきた。利用をけん引しているのは、おトクな購入日を提案する機能や、商品を比較してくれる「AIおまかせ比較」など。ユーザー側の利用が進み、2026年7月時点でがAIエージェント経由の取扱高比率は約20%に達している。

注目は2026年6月に実装された、スクリーンショットやテキストでメモを残すとそれをもとにAIが商品を提案してくれる「AIお買い物メモ」で、提供から約1カ月で利用者が約12倍に増えたという。

※参考記事
Yahoo!ショッピング「AIお買い物メモ」提供開始 手書きメモから関連商品を提案
Yahoo!ショッピング、「AIおまかせ比較」を提供開始
Yahoo!ショッピング、生成AIによる「おトク日提案機能」で単日取扱高が最大111%に

2026年8月18日に開催された「『Yahoo!ショッピング』AIエージェントに関する説明会」に登壇した、LINEヤフー株式会社 コマースドメイン ショッピングSBU プロダクト開発1ユニット ユニットリード 市丸数明氏

今後は、購入した商品がいつ届くのかを、AIが過去の配送実績などをもとに知らせる「AIお届け予報」、ファッションアイテムのコーディネート提案や着用イメージの確認ができる「AIおまかせコーディネート」(9月2日に一部ストアでの先行提供開始)をスタート予定。その先に、ユーザーひとり一人がページデザインや掲出される商品を自由にコントロールできる“欲しいものがそろっている自分専用売り場”の提供を見据える。

商品を探す手間を減らしたり、いつ届くのかが想定できたりと、AIエージェントによって買い物時のストレスを低減し、新たな購買体験を提供することで、ユーザーの利用が進みそうだ。

※参考記事
Yahoo!ショッピング、「爆買ウルトラSALE」開催 「AIお買い物メモ」がサポート
LINEヤフー、オンラインでの服選びをサポートするサービスを一部ストアで先行提供

Yahoo!ショッピング「ストア向けAIエージェント」3つの特徴

運営ツール「ストアクリエイターPro」上で展開する、出店者向けのAIサービス「Yahoo! EC Pilot」は、2026年3月にリリース。説明会に登壇したLINEヤフー社の河内俊介氏によると、同社が目指しているのは、ストア運営作業を効率化するだけでなく、少ない負担で良い判断ができるようにすることだという。

「Yahoo! EC Pilot」は、ツール内の「Pilotに質問する」からアクセスできる。主な機能は文章作成支援、商品情報作成支援、接客や問い合わせ対応の支援、チャットによる質問対応、そして、ストアの分析支援だ。

その特徴は大きく3つある。1つ目は、AIがストアの状況を捉えてアクションを提案する、「提案型ソリューション」が充実していること。

販促活動を振り返ってサジェストする機能など、AIがストアの課題を発見し、次に取るべきアクションを提案してくれる。今後は、アクションを取った後の効果などを検証するコンサルティングレポート(仮)機能の実装も予定されており、PDCAをまわしスピード感あるストア運営を支援するのが狙いだ。

河内氏が挙げた2つ目の特徴は、「グループサービスとの高い接続性」。ストアでの利用率の高いLINE公式アカウントから機能提供を開始しており、LINE配信で読まれやすい文面を作成する機能などが好評とのこと。今後は、LINEの配信を分析して、次のアクションを提案する機能などの実装が予定されている。

3つ目は、ストア運営の「ベーシックな部分」への支援だ。過去の返信を参考に問い合わせに対する返信文章を作成してくる機能や、競合と比較して自社の弱点などを分析する機能が、日々の運営をサポートしてくれる。

説明会では、インナーウェアを販売している株式会社 白鳩の事例が紹介された。同社で、ある商品に関して「Yahoo! EC Pilot」で競合との比較・分析を行い、提案された改善ポイントをもとに「送料無料対応」を実施したところ、CVR(購入率)は40%増、月間販売数は20%増加する成果があったという。

「Yahoo! EC Pilot」の強みについて、「単なる分析にとどまらず、課題の発見から。自律的に改善アクションを提案し、実行支援できること」と河内氏。白鳩の活用事例は、そうした強みが発揮された例と言えそうだ。

LINEヤフー株式会社 コマースドメイン ショッピングSBU プロダクト開発2ユニット ユニットリード 河内俊介氏

AIエージェント時代、ストア側は何をすべきか

河内氏によると、「Yahoo! EC Pilot」を利用しているストアと使っていないストアとの間で、前年比取扱高で15ポイントの違いが表れており、すでに小さくない差が生まれつつあるという。ストアにとってAIエージェント導入が待ったなしの状況と言えそうだ。

では、ユーザーがAIエージェントを介して商品を選ぶ時代に、販売する事業者として「AIに選ばれるストア」を構築するために、どこに気をつけるべきだろうか。

河内氏によると、Yahoo!ショッピングの場合、検索上位の重要性は継続している。「現時点のAIエージェントのレコメンドは、検索をベースにしており、『優良配送』や『PRオプション』の設定など、これまでの『検索上位を取るための施策』は引き続き有効で、AIにも選ばれやすくなる」とのこと。

ただし、AIは従来のキーワード一致に加えて、「プレゼント用にしたい」「去年買った服がよかったから、同じサイズがほしい」といった、ユーザーの文脈(コンテキスト)を理解して選んでいるという。

つまり、これまでと同様に商品の説明文や商品データを「正しく、わかりやすくする」ことは重要であり、商品ページをしっかり構築し、検索上位を取るための施策を打つことが、AIエージェント時代でも引き続き求められる。そのうえで、ユーザーのコンテキストに応えられる要素を付け加えることが、勝ち筋と言えそうだ。


記者プロフィール

湯浅 英夫

湯浅 英夫

フリーライター。新潟県上越市生まれ。1992年、慶應義塾大学理工学部機械工学科卒。PC、スマートフォン、ネットサービス、デジタルオーディオ機器などIT関連を中心に執筆。主な著書に「挑戦すれば必ずできる 自作パソコン完全組み立てガイド」(技術評論社)、「大きな字だからスグ分かる!エクセル2013入門 Windows 8対応」(マイナビ)、「Excel2000 300の技」(技術評論社)がある。

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