体験型ポップアップ「さわれるMakuake」に見る、【EC×リアル】の仕掛けと狙い

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桑原 恵美子

ECでの購入が普及し、ユーザーに選ばれるための競争が激しさを増すにつれ、「Webでは伝えきれない」商品の質感や使い心地を実際に体験してもらうオフラインイベントへの関心が高まっている。そんななか、応援購入サービス「Makuake」を運営する株式会社マクアケは、一般発売前の商品に実際に触れて体験できる「さわれるMakuake」を9月19日から12日間にわたって開催し注目を集めた。

「“手に取って体験”し、納得して選べる新しい応援購入の場」として開催された「さわれるMakuake」とは、いったいどのようなイベントだったのか?

「Makuake」サービス開始以降、最長期間のポップアップイベント

「Makuake」サービス開始以降、最長期間のポップアップイベント

株式会社マクアケが運営する「Makuake」は、プロジェクト実行者が開発ストーリーとともに新商品・新サービスを公開し、サポーターが応援の気持ちを込めて先行購入できる、応援購入サービス。2013年の開始以来、現在までに累計5万1000件以上の商品やサービスを世に送り出している。

同社が2026年9月19日から9月30日まで東京・渋谷で開催した「さわれるMakuake」は、一般発売前の約30プロジェクトを、来場者が実際に手に取って体験できるイベント。「Makuake」サービス開始以降で最長期間のポップアップイベントであり、会場での販売は行わず、あくまでもプロジェクト実施中の商品に触れたり、その商品や作り手(事業者)への理解を深めることを目的とした「ショールーム」の位置付けとして開催された。

2026年9月19日から9月30日の12日間にわたってShibuya Sakura Stage BLOOM GATE(東京都渋谷区)で開催された「さわれるMakuake」。なお、本記事内で掲載している商品・プロジェクトにはすでに終了しているものもある。詳細はMakuake内の各プロジェクトページを参照

一般的なECモールとの違いは? 応援購入の仕組みとユーザー特性

そもそもなぜ「Makuake」から、このように多くの商品やサービスが世に出ているのか。会場で案内してくれた同社担当者によれば、「一般的なECのショッピングモールと『Makuake』の違いは、テスト販売として活用できる仕組みと、購入者の属性にあると考えている」と語る。

一般的なECモールでは、作り手が商品を発売すれば即座に流通に乗るため、前提として安定した製造ラインと迅速な出荷体制が求められるが、場合によっては過剰に在庫が積み上がるリスクを伴う。しかし「Makuake」は、一般発売前の商品をテストマーケティングとして“実験的に”市場に投入できる点が特徴だ。プロジェクトサポーターから「応援購入」として先に資金を得たうえで製造、配送を行える仕組みなので、在庫リスクを抑えてビジネスをスタートすることが可能になるケースも少なくない。

さらにテスト販売(0次流通)として機能し、実際に売れるかどうかを見極めることができるうえ、一定の販売実績を積めば「Makuakeでこれだけ売れた」という具体的な数字が蓄積され、サポーターの反応から、どのような層が購入するのか、どの程度の販売が見込めるのか、さらには想定される課題までを一般販売前に把握することも可能だ。

購入者の特性にも違いが見られる。「Makuake」のユーザーは、特定の商品を目的に訪れるというよりも、「まだ見ぬ面白い商品との出会い」を求める傾向が強い。商品やサービスの背景にあるストーリーやこだわりに共感し、手元に届くまでの時間も含めて楽しむ姿勢がある点は、「すぐに手に入れたい」というニーズが中心となる一般的なECモールの利用者とは対照的と言える。

【左写真】EMS搭載 新習慣スカルプケアデバイス「スカルプD エレクトロショットプロ」(アンファー株式会社●Makuake内プロジェクトページ) 【右写真】折りたたみ持ち運びできるマッサージチェア「リラックスポーター」(ファミリーイナダ株式会社●Makuake内プロジェクトページ)

撮影者を追いかけて空撮する自律飛行カメラ

以下、展示されたプロジェクトの中から、初日の会場で注目を集めていた商品の一部を紹介する。

まずは、1台で地上でも空中でも自由な撮影が可能になる新カテゴリーのカメラ「HOVERAir VERSA」。3軸メカニカルジンバルを搭載したハンドヘルド(手持ち)カメラとして幅広いシーンで使用できるほか、フライトウィングを装着することで、自律飛行による空撮も可能。自動追尾機能を備えており、たとえば旅先でドローン撮影をしたい時でも、誰かに託すことなく多彩なシーンを撮影することができる。

会場で実際に使用してみて驚いたのが、操作方法のシンプルさ。フライトウィングを装着するパーツは磁石付きなので、簡単に装着が完了。後は電源を入れ、撮影者の目をカメラに合わせれば登録も完了する。機械操作に自信がない人でも、迷いようがないほどのシンプルさだ。さらにAIが被写体の位置や構図を分析・サポートするので、設定などを細かく考えなくても印象的な映像を残すことが可能になる。

AI自律飛行カメラ「HOVERAir VERSA」(Zero Zero Robotics Japan株式会社●Makuake内プロジェクトページ)

音声を24時間録音&テキスト化&整理する、超軽量ウェアラブル音声AI

取材ライターにとってレコーダーは必携の道具だが、こうした形と機能なら多くの職種で役立つのでは、と感じたのが、会話を自動で録音・テキスト化できる軽量ウェアラブル音声AI 「Mori」だ。

実際に手に取ってみてびっくりしたのが、その軽さ。これならウォッチバンドで腕に装着しても、クリップで衣服の襟元に付けても、まったく気にならない。さらに驚いたのはその機能。通常のレコーダーは、録音する時だけスイッチを入れ、終わるとスイッチを切るが、うっかり入れ忘れたり切り忘れたりすることも少なくない。しかし「Mori」はロングバッテリーを搭載しているため、一度の充電で24時間以上の連続録音が可能。さらにその内容を自動で文字起こしし、AIが要約し、テーマごとに整理して保存するので、次の行動にスピーディーに移ることができる。

ミーティングのレポート作成はもちろん、作業現場での指示をテキスト化して後からゆっくり確認できたり、飲食業でオーダーを取ったりするのにも利用できそう。さらに小型で目立たず、オンオフの操作も不要なので、クレーマー対応やハラスメント対応の証拠保存や、飲食店で料理説明の記録にも役立ちそうだ。50言語以上の文字起こしに対応しているので、外国人観光客の多い店舗や施設のスタッフにも歓迎されるだろう。

ウェアラブル音声AI「Mori(Mori Journaling AI)」(franky株式会社●Makuake内プロジェクトページ)

「HUAWEI FreeClip 2 S」も、実際に装着してみて驚いた製品のひとつ。耳をふさがないイヤーカフ型のイヤホンというデザイン性もさることながら、耳穴に入れる球形の部分を含めて、吸いつくようにフィットする。音質もクリアで、しかも周囲のノイズも低減しつつストレスにならない程度に聞こえる(AIが周囲の環境と使用者の聴こえをリアルタイムで解析し、音量を常に最適化しているとのこと)。

さらに、耳をふさいでいないのに音漏れも抑えられている。いったいどうなっているのか不思議で、何度もつけてははずし、確認してしまった。

リキッドシリコーン+形状記憶金属による柔軟性で耳にフィットする「HUAWEI FreeClip 2 S」(ファーウェイ・ジャパン●Makuake内プロジェクトページ)

「触れて、体験する価値」をあらためて実感

そのほか、高耐久撥水素材「ダントツ撥水®CZ」を使用した「ダントツ撥水®CZ ポケッタブルパーカー」は、実際に着用してみて、まるで着ていないかのような軽さに驚いた。約65gという軽さで、たたむと手のひらサイズにおさまるので、最近頻発しているゲリラ豪雨対策にも便利だと感じた。

もう一つ、紙の扇子には繊細で壊れやすいイメージがあるが、それを裏切るのが、和紙ではなく本の装丁などに使われる高級特殊印刷用紙、ファインペーパーを使用した「孔雀扇(くじゃくせん)」。光を受ける角度で表情が変わるメタリックな質感と共に、実際にあおいでみて驚いたのが、風圧の力強さ。これを試したら、通常の扇子では物足りなくなるのでは。この商品もまた、実際に触ってみないとその本質が伝わりにくい商品だろう。

【左写真】撥水・防風・透湿性を兼ね備えた全天候型の「ダントツ撥水®CZ ポケッタブルパーカー」(マテーレトレーディング株式会社●Makuake内プロジェクトページ) 【右写真】紙の専門商社である株式会社竹尾のファインペーパーを用いた「孔雀扇」。骨は金属製(株式会社スペースシーファイブ●Makuake内プロジェクトページ)

「触れる」ことを前面に打ち出したオフラインイベントは、今回が初

株式会社マクアケ コーポレート本部 コーポレートリレーションズ部 企業広報 マネージャー 高野翔一氏に今回のイベントの狙いを聞いた。

――今回「さわれるMakuake」を企画した最大の理由は?

「Makuake」としては、現在オフラインの場づくりを非常に重視しています。というのも、「Makuake」は基本的にオンラインのサービスであり、応援購入という形で一般販売前の新しい商品を扱っているマーケットプレイスです。そのため、「実際に触ってみたい」という声は以前から多くいただいていました。そうしたニーズに応える形で、実際に手に取って体験できる場をつくりたい、というのが今回の大きな目的です。

またオフラインのイベントを実施することにより、「Makuake」をまだご存じない方に、商品だけではなくサービス自体にも興味を持っていただくきっかけになることも期待しています。

――オフラインイベント自体はこれまでも開催してきたと思うが、それとの違いは?

過去には「Makuakeミライマルシェ」という、ヒット商品の作り手(プロジェクトの実行者)に直接会えて、その場で買えるオフラインのショッピングイベントを2022年と2023年に実施しました。でも「さわれるMakuake」という名称で、Makuake実施中の商品に実際に触れる機会として12日間の長期間に及ぶポップアップイベントとして開催した形は初めてですね。

ただ、プロジェクト実行者が生活者とコミュニケーションをとれる場をつくることも、私たちが大切にしているポイントですので、今回も会期中の休日・祝日には、プロジェクト実行者が登場する「メイカーズタイム」を実施しました。

――今回展示されているプロダクトの特徴は?

時代の流れもあり、AIを搭載したプロダクトが増えているのが特徴です。こうした製品は比較的高価格帯のものも多いため、「実際に触って体感してみたい」というニーズが特に強いと感じています。また、「Makuake」はガジェットのイメージが強いかもしれませんが、実際にはファッションなどのジャンルも多く展開しています。ファッションアイテムについても「試してみたい」という声は多く、今回のイベントでもそうしたニーズに応えています。

――出展プロダクトの選定方法は?

今回展示している約30のプロダクトは、基本的に「Makuake」側からお声がけしたものです。イベント期間中にプロジェクトを実施している、あるいはこれから開始する事業者様の中から選定しています。その中でも、体験してはじめて価値がわかるプロダクトや、少し未来を感じさせるようなプロダクトなど、「実際に触ってみたい」と思っていただけるものを中心に選びました。単に並べるのではなく、“体験する価値があるか”という観点を重視しています。

【左写真】しっぽを振り、前足を差し出すなど豊富なモーションが特徴のAIロボットドッグ「Sirius」(YMTREND株式会社●Makuake内プロジェクトページ) 【右写真】アプリ連動で話すほどに学習する猫型AIペット「ワルル(Walulu)」(株式会社グロウスコム●Makuake内プロジェクトページ)

オフラインとオンラインの融合を目指す動きが活発化するなかで、今回の取り組みは展示する商品数の多さではなく、“体験する価値がある”ことを選定基準のひとつにしているのが大きな特色。その思想を軸に場を設計しているので、既存のサービス利用者との親和性が高いだけでなく、新規ユーザーの関心も引きやすいというメリットがあるのを感じた。


記者プロフィール

桑原 恵美子

桑原 恵美子

フリーライター。秋田県生まれ。編集プロダクションで通販化粧品会社のPR誌編集に10年間携わった後、フリーに。「日経トレンディネット」で2009年から2019年の間に約700本の記事を執筆。「日経クロストレンド」「DIME」他多数執筆。

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